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Microsoft SQL Server 2016 実践シリーズ (HTML 版)
「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]

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3.14 SQL Server 2016 で提供が中止された機能

SQL Server 2005 以降の SQL Server と SQL Server 2016 との間では、データベース エンジンの基本部分に関して大きな変化はなく、ほとんどの機能をそのまま利用することができます。変更点に関しては、SQL Server 2016 のオンライン ブックの以下のトピックにまとまっています。

Backward Compatibility(旧バージョンとの互換性)
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/cc280407.aspx

00152

このトピックでは、さらに次のトピックに分かれています。

  • Deprecated SQL Server Features in SQL Server 2016
    将来の SQL Server(SQL Server 2016 の次のバージョン以降)で廃止される予定の機能(非推奨の機能)
  • Discontinued SQL Server Features in SQL Server 2016
    SQL Server 2016 で廃止された機能
  • SQL Server Database Engine Backward Compatibility
    SQL Server データベース エンジンの旧バージョンとの互換性
  • Analysis Services Backward Compatibility
  • Integration Services Backward Compatibility
  • Reporting Services Backward Compatibility
  • Backward Compatibility (Master Data Services)
  • Replication Backward Compatibility

Analysis Services や Integration Services、Reporting Services、マスター データ サービス、レプリケーション機能を利用している場合は、それぞれのトピックを参照しておくことをお勧めします。

SQL Server 全体や、データベースに関連する部分は、最初の 3つ(Deprecated SQL Server Features in SQL Server 2016Discontinued SQL Server Features in SQL Server 2016SQL Server Database Engine Backward Compatibility)になるので、ここではこれらについて重要な順に説明します。

◆ SQL Server 2016 で提供が中止された機能(Discontinued)

Discontinued Database Engine Functionality in SQL Server 2016 SQL Server 2016 で廃止されたデータベース エンジンの機能
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms144262.aspx

00153

SQL Server 2016 で提供されなくなった機能は、次の 3つのみです。

  • 32ビット版のインストーラーの廃止(X64 版のみの提供)
  • 互換性レベル 90(SQL Server 2005 レベル)の廃止(SQL Server 2014 から廃止)
  • ActiveX サブシステムの廃止(SQL Server Agent ジョブでの ActiveX スクリプトの実行不可)

互換性レベル 90 は廃止されたので、アップグレード時には、90以下のデータベースは 100 に自動的にアップグレードされています。また、5章の「移行」で紹介するバックアップ/復元機能を利用した場合は、90以下のデータベースは、復元時に 100 に自動的にアップグレードされます。

ActiveX に関しては、SQL Server Agent ジョブで「ActiveX スクリプト」を利用している場合に影響します。もし、以前のバージョンで ActiveX スクリプトで記述したジョブがある場合は、SQL Server 2016 からは ActiveX スクリプトを実行できなくなっているので、代わりに PowerShell などを利用するように変更する必要があります。

◆ SQL Server 2014 以前のバージョンで提供が中止された機能

SQL Server 2014 以前のバージョンで提供が中止された機能は、次のとおりです。

SQL Server 2014 で提供が中止されたもの

  • 互換性レベル「90」(SQL Server 2005 相当の互換性レベル)の提供中止

SQL Server 2012 で提供が中止されたもの

  • Active Directory Helper サービスの提供中止
    (sp_ActiveDirectory_Obj、sp_ActiveDirectory_SCP、sp_ActiveDirectory_Start)
  • 互換性レベル「80」(SQL Server 2000 相当の互換性レベル)の提供中止
  • BACKUP ステートメントでの WITH PASSWORD の提供中止
  • RESTORE ステートメントでの WITH DBO_ONLY の提供中止
  • 構成オプションの「user instance timeout」と「user instances enabled」の提供中止
  • VIA プロトコルの提供中止
  • トリガーでの WITH APPEND 句の提供中止
  • sp_dboption の提供中止(ALTER DATABASE を利用するように変更)
  • SQL Mail の提供中止(データベース メールを利用するように変更)
  • 32 ビットの AWE (Address Windowing Extensions) と 32 ビットのホット アド メモリ サポートの提供中止(代わりに X64 環境を利用するように変更)
  • DATABASEPROPERTY の提供中止(代わりに DATABASEPROPERTYEX を利用するように変更)
  • SQL-DMO の提供中止(代わりに SMO を利用するように変更)
  • FASTFIRSTROW ヒントの提供中止(代わりに OPTION (FAST n) を利用するように変更)
  • sp_addserver によるリモート サーバー機能の提供中止(代わりにリンク サーバーを利用するように変更)
  • sp_dropalias の提供中止
  • PWDCOMPARE の提供中止
  • SMO での Service Broker のプログラミングの提供中止
  • SET DISABLE_DEF_CNST_CHK の提供中止
  • sys.database_principal_aliases の提供中止
  • RAISERROR integer 'string' という形式で利用する RAISERROR の提供中止(RAISERROR(...) 構文を利用するように変更)
  • COMPUTECOMPUTE BY の提供中止(代わりに ROLLUP を利用するように変更)
  • *= および =* の提供中止(代わりに OUTER JOIN を利用するように変更)
  • XEvents(拡張イベント)の変更

SQL Server 2008/2008 R2 で提供が中止されたもの SQL Server 2008 R2 の該当ヘルプより
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms144262(v=sql.105).aspx

  • 互換性レベル 606570 の提供中止(SQL Server 7.0 以前の互換性レベル)
  • sp_addalias の提供中止
  • 登録済みサーバー API の提供中止
  • DUMPLOAD ステートメントの提供中止
  • BACKUP LOG WITH TRUNCATE_ONLY および NO_LOG の提供中止(代わりにログ バックアップを実行するように変更)
  • DBCC CONCURRENCYVIOLATION の提供中止
  • グループ機能(sp_addgroup、sp_changegroup、sp_dropgroup、sp_helpgroup)の提供中止(代わりにロールを利用するように変更)
  • Northwind pubs サンプル データベースの提供中止(代わりに AdventureWorks を提供)
  • Reporting Services の Itanium プラットフォームでのサポートの提供中止
  • xpress エディションでの SQL-DMO の提供中止
  • Web Assistant 機能の提供中止
  • セキュリティ構成ツールの提供中止
  • 自動インストール(無人セットアップ)でのいくつかのパラメーター変更

以上が提供が中止された機能になりますが、皆さんのシステムに該当しそうなものは、「互換性レベル 90 の提供中止」、「32ビット AWE の提供中止」(代わりに X64 を利用)「BACKUP LOG WITH TRUNCATE_ONLY の提供中止」(代わりにログ バックアップを利用)あたりではないでしょうか?

◆ 推奨されない機能(将来のバージョンで提供されなくなる機能)

Deprecated Database Engine Features in SQL Server 2016 SQL Server 2016 データベース エンジンの非推奨機能
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143729.aspx

00154

このページでリストされている機能は、SQL Server 2016 では引き続き利用することができますが、次の SQL Server 以降で提供が停止される予定の機能の一覧になっています。したがって、今後のアプリケーション開発においては、これらの機能はなるべく利用しないほうが、今後のバージョンアップ時に問題が発生しなくて済むようになるので、できる限り利用しないことをお勧めします。

停止される予定の機能は、以下のようにクエリを実行して確認することもできます。

SELECT FROM sys.dm_os_performance_counters   
 WHERE object_name 'SQLServer:Deprecated Features'
00155

SQL Server 2016 の次のバージョンでは、互換性レベル 110(SQL Server 2008 R2 レベル)や SQL Server 2008/2008 R2 からのアップグレード、sqlmaint ユーティリティの廃止などが予定されています。

◆ 重大な変更(Breaking Changes)

SQL Server Database Engine Backward Compatibility(SQL Server データベース エンジンの旧バージョンとの互換性)トピックでは、次のように 3つのサブトピックがあります。


http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143532.aspx

00156

非推奨機能(Deprecated)と廃止された機能(Discontined)のトピックは、前掲のものと同じリンクになっています。重大な変更(Breaking Changes)のトピックについては、ここで説明します。

Breaking Changes to Database Engine Features in SQL Server 2016 SQL Server 2016 におけるデータベース エンジン機能の重大な変更
http://msdn.microsoft.com/en-us/library/ms143179.aspx

00157

このページで紹介されている重大な変更は、以下の 4点です。

  • sys.dm_io_virtual_file_stats の sample_ms列のデータ型が int から bigint に変更
  • sys.fn_virtualfilestatsの TimeStamp 列のデータ型がint から bigint に変更
  • 暗号化アルゴリズムの MD2、MD4、MD5、SHA、SHA1 は非推奨。互換性レベル 130 では、SHA2_256 と SHA2_512 のみが許可される
  • 互換性レベル 130 では、datetime から datetime2 への暗黙的な変換では、ミリ秒が考慮されるように変更されたので、明示的な変換を利用することを推奨

◆ SQL Server 2014 以前のバージョンでの重大な変更

SQL Server 2014 以前のバージョンでの重大な変更Breaking Changes)トピックに記載されている内容は、次のとおりです。

SQL Server 2014 での重大な変更点

  • 特になし

SQL Server 2012 での重大な変更点

  • NEXT がキーワードに変更されたので列名やテーブル名に NEXT を利用している場合はエラーが発生する可能性がある(∵シーケンスのサポート)
  • PIVOT は互換性レベルが 110 の場合、再帰 CTE で許可されない
  • アプリケーション ロール(sp_setapprole と sp_unsetapprole)の動作の変更
  • EXECUTE AS のクッキーの OUTPUT パラメーターの動作の変更
  • sys.fn_get_audit_file 関数で 2 つの追加列がある
  • WITHIN が予約キーワードに変更された
  • time および datetime2 データ型の計算列で、CAST または CONVERT で日付/時刻スタイルを省略したときの動作の違い(110 以降では既定のスタイルが 121 になる)
  • ALTER TABLE で 4部構成(server.database.schema.table)のテーブル指定での動作が変更
  • FOR BROWSESET NO_BROWSETABLE ON の動作の変更
  • SOUNDEX 関数では動作の変更
  • DML ステートメントが失敗した場合の RowCount 動作の変更
  • SERVERPROPERTY 関数の動作の変更
  • CREATE LOGIN WITH PASSWORD = 'password' HASHED の動作の変更
  • datetimeoffset で CAST/CONVERT で日付/時刻スタイルを省略したときの動作の変更
  • 動的管理ビューの変更(sys.dm_exec_requests、sys.dm_os_memory_cache_counters、sys.dm_os_memory_cache_entries、sys.dm_os_memory_clerks、sys.dm_os_workers、
    sys.dm_os_memory_nodes、sys.dm_os_memory_objects、sys.dm_os_sys_info)
  • カタログ ビューの変更(sys.data_spaces、sys.partition_schemes、sys.filegroups、sys.partition_functions)
  • geometry、geography、および hierarchyid での Microsoft.SqlServer.Types.dll の変更
  • XQuery 関数のサロゲート対応に伴う動作の変更

SQL Server 2012 の該当ヘルプより
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cc707784(v=sql.110).aspx

  • XEvents(拡張イベント)の変更
    resource_monitor_ring_buffer_record/memory_node_oom_ring_buffer_recorded で
    single_pages_kb、multiple_pages_kb が削除、target_kb、pages_kb を追加
  • Sync Framework が含まれなくなった(別途インストールが必要)

SQL Server 2008/2008 R2 での重大な変更点

  • 自動インストール時に /IAcceptSQLServerLicenseTerms が必須になった
  • SMO の変更(SmoEnum.dll が削除されているなど)
  • 新しい照合順序の追加(Windows Server 2008 が提供する照合順序に完全対応した新しい照合順序を 80個導入)
  • CLR 統合(SQL CLR)の動作の変更
  • 動的管理ビューの変更(sys.dm_os_sys_info、sys.dm_exec_query_resource_semaphores、sys.dm_exec_query_memory_grants)
  • Windows 認証でのログイン エラー時のエラー番号の変更(SQL Server 2005 では 18452、2008 では 18456)
  • プラン表示の XML スキーマの変更
  • DDL イベント ALTER_AUTHORIZATION_DATABASE の動作の変更
  • CONVERT 関数での無効なスタイルが渡されたときの動作の変更
  • アセンブリに対する EXECUTE 権限の許可、拒否、および取り消しを行うことはできなくなった
  • システム型に対する権限の許可、拒否、および取り消しを行うことができなくなった
  • GROUP BY リストに使用される式にサブクエリを含めることができなくなった
  • OUTPUT 句の動作の変更
  • precompute rank サーバー レベル オプションがサポートされなくなった
  • スナップショット分離で READPAST ヒントを指定することができなくなった
  • sp_helpuser の動作の変更
  • 透過的なデータ暗号化(TDE)がサポートされるようになった
  • XQuery の動作の変更
  • SSL を使用した SQL Server Native Client 接続の動作の変更

以上が重大な変更があったものになりますが、皆さんのシステムに該当するものは少ないのではないでしょうか。

◆ SQL Server 2014 以前のバージョンでの動作の変更

SQL Server 2014 以前のバージョンでの動作の変更Behavior Changes)トピックに記載されている内容は、次のとおりです。

SQL Server 2014 での動作の変更

  • XML ドキュメントで 4020 文字を超えた場合の動作の変更

SQL Server 2012 での動作の変更

SQL Server 2012 の該当ヘルプより
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cc707785(v=sql.110).aspx

  • マルチサブネット フェールオーバー クラスターがサポートされる
  • フェールオーバー クラスターでの SQL Server エラー検出方法の変更
  • SQLDescribeCol の動作の変更
  • CLR ユーザー定義関数CLR ユーザー定義型の決定的メソッドでたたみ込みが可能になった
  • 空間型の STEnvelope() メソッドの動作の変更
  • LOG 関数で省略可能なパラメーターの追加
  • パーティション インデックス操作中の統計計算の変更
  • XML value メソッドによるデータ型変換の変更
  • XML モードでの sqlcmd.exe の動作変更
  • DBCC CHECKIDENT のメッセージの変更
  • XML データ型に対する exist() 関数の動作の変更

SQL Server 2008/2008 R2 での動作の変更

SQL Server 2008 の該当ヘルプより
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143359(v=sql.100).aspx

  • ジョブのスクリプト生成での動作の変更(@schedule_uid)
  • access check result cache オプションの変更
  • フルテキスト検索のアーキテクチャの変更(データベース エンジンに統合)
  • ループバック リンク サーバーでの動作の変更
  • プラン ガイドの動作の変更
  • パーティション テーブル/インデックスでのクエリ処理方法の変更(クエリ プロセッサの改良)
  • REPLACE 関数で末尾のスペースが切り捨てられるかどうかの動作の違い(SQL Server 2005 では切り捨て、2008 では切り捨てない)
  • Resource データベースが作成される場所の変更
  • tempdb データベースでの PAGE_VERIFY オプションの既定値が CHECKSUM に変更
  • INSERT .. SELECT での最小ログ記録のサポート
  • XML データ型での動作変更(lax 検証、xs:anyType 要素など)

これらも皆さんのシステムに該当するものは少ないのではないでしょうか。

フルテキスト検索機能を利用している場合には、SQL Server 2008 や SQL Server 2012 で大きな動作変更があるので、以下のトピックも一読しておくことをお勧めします。

フルテキスト検索における旧バージョンとの互換性
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143544.aspx

フルテキスト検索の重大な変更
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143709.aspx

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