SQL Server のことなら SQL Quality SQL Server パフォーマンス チューニング、コンサルティング、アドバイス、相談、定期診断、トレーニング

ホーム > 技術情報 > SQL Server 実践「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

Microsoft SQL Server 2016 実践シリーズ (HTML 版)
「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]

目次へ | 前のページへ | 次のページへ

3.13 クエリストアで互換性レベルの違いによる実行プランの比較

互換性レベルを変更したことによる性能調査(実行プランの比較)には、SQL Server 2016 から提供された「クエリ ストア」(Query Store)機能を利用するのがお勧めです。クエリ ストアは、Store(蓄積)という名のとおり、クエリの実行履歴実行プランを保存できる機能です。

00142

これまでのバージョンでも query_stats という動的管理ビュー(DMV)を参照すれば、クエリの実行履歴を確認することができましたが、この情報は、SQL Server を再起動したり、プロシージャ キャッシュのサイズが圧迫された場合には、参照できない(クリアされてしまう)という性質のものでした。これに対して、クエリ ストアであれば、クエリの実行履歴を永続化することができるので、SQL Server を再起動しても、過去に遡ってクエリの実行履歴を確認することができます。

クエリ ストアでは、クエリの実行履歴だけでなく、実行プランも記録しておくことができ、かつ異なる実行プランで実行された場合には、その複数の実行プランを比較することができます。

00143

同じクエリに対して、複数の実行プランがある場合には、どちらを利用させたいのかを指定(データベース管理者によるプラン強制/固定)することもできるので、互換性レベルを変更する前後で、性能が良いほうの実行プランを強制利用させる、といった使い方ができます。

◆ 互換性レベルの違いを評価する手順

互換性レベルを変更するにあたっては、次のようにクエリ ストアを利用するのがお勧めです。

1.互換性レベルはアップグレードした直後のものを利用する (SQL Server 2008/2008 R2 なら 100、SQL Server 2012 なら 110、SQL Server 2014 なら 120 をそのまま利用しておく)

2.データベースでクエリ ストアを有効化する

3.アプリケーションを実行して、データベースに対してクエリを発行する、あるいは、アプリケーションから発行されるクエリ(トレースで取得したものや .sql ファイルなど、ワークロードをスクリプト化したもの)をデータベースに対して実行する

4.互換性レベルを 130(SQL Server 2016 レベル)に上げる

5.手順 3 と同じクエリ(ワークロード)をデータベースに対して実行する

6.クエリ ストアを参照して、実行プランの違いを確認する

7.複数の実行プランがあるものは、最適な実行プランを利用するように、必要に応じてプラン強制を実施する

◆ クエリ ストアの有効化

クエリ ストアを有効化するには、次のようにデータベースを右クリックして、[プロパティ]をクリックします。

00144

データベースのプロパティ]ダイアログでは、[クエリ ストア]ページを開いて、[操作モード(要求時)]を[読み取り/書き込み]に変更し、[OK]ボタンをクリックします。

以上でクエリ ストアの設定が完了です。これでクエリ ストアが有効になって、クエリの実行履歴が自動的に記録されていくようになります。

クエリ ストアを有効化すると、次のようにデータベース内に[クエリ ストア]フォルダーが作成されて、記録されたクエリを確認することができます。

00145

クエリ ストアの設定後は、アプリケーションを実行して、データベースに対してクエリを発行、あるいは、アプリケーションから発行されるクエリ(トレースで取得したものや .sql ファイルなど、ワークロードをスクリプト化したもの)をデータベースに対して実行します。

00146

実行が完了したら、データベースの互換性レベルを 130(SQL Server 2016 レベル)に変更します。

互換性レベルを変更したら、互換性レベルを変更する前と同じクエリ(ワークロード)をデータベースに対して実行します。

00147

実行が完了したら、データベース内の[クエリ ストア]フォルダーを展開して、[リソースを消費するクエリの上位]をクリックします。

00148

左側のグラフは、合計実行時間の長い順にクエリが表示されて、右側のグラフには、選択したクエリの実行プランが表示されます。右側のグラフの Y軸は、合計実行時間になっていて、実行プランごとの合計実行時間(各実行プランで実行されたクエリの合計の実行時間)で、どの実行プランが速く実行できたのかを一目瞭然で分かるようになっています。

この実行プランのグラフに、複数の実行プランが表示されているということは、互換性レベルを変更する前後異なる実行プランで実行されていたということにもなります。

これに対して、次のように 1つの実行プランしか表示されない場合は、互換性レベルを変更しても全く同じ実行プランが利用されたということが分かります。

00149

複数の実行プランがある場合(互換性レベルの影響があった場合)は、次のように Shift キーを押しながら 2つのプランID をクリックして選択して、ツールバーの[選択したクエリのプランを、別々のウィンドウで比較します]をクリックすることで、実行プランを並べて比較することもできます。

00150

このように並べて表示することで、どこが異なるのかを非常に分かりやすく確認することができます。これで、合計実行時間や、内部的な実行プランを確認できるので、このうち、効率の良い実行プランを確実に利用させるようにするには、実行プランのグラフの上部に[プランの強制]ボタンがあるので、これをクリックするだけで行うことができます。

このように、クエリ ストア機能を利用すれば、互換性レベルの違いによる性能差を簡単に確認することができるので、ぜひ利用してみてください。

なお、その他のクエリ ストアの利用方法については、SQL Server 2016 自習書シリーズの No.1「SQL Server 2016 からの新機能の概要」編でも説明しているので、こちらもぜひご覧いただければと思います。

その他、互換性レベルに応じた実行プランについては、オンライン ブックの以下のトピックも参考になると思います。

クエリ プランの移行
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/bb895281.aspx

◆ データベース単位での動作変更(データベース スコープ構成)

SQL Server 2016 からは、いくつかのクエリ プロセッサの動作をデータベース単位で変更できるようになっています。これは「データベース スコープ構成」と呼ばれて、次のようにデータベースのプロパティの「オプション」ページで設定できます。

00151

データベース スコープ構成では、MAXDOP(並列クエリ時の利用する CPUコア数の制限)や CE(基数見積)の設定を変更できるので便利です。CE は、SQL Server 2014(互換性レベル 120)から変更された新しいアーキテクチャを利用する場合は「レガシ基数見積」を「オフ」、SQL Server 2012 以前と同じ CE を利用したい場合は「オン」に設定します。

データベース スコープ構成は、ALTER DATABASE SCOPED CONFIGURATION ステートメントを利用して、次のように設定することもできます。

-- レガシ基数見積 オン設定する場合
USE データベース名
ALTER DATABASE SCOPED CONFIGURATION
 SET LEGACY_CARDINALITY_ESTIMATION ON

これらの設定を変更した場合も、クエリ ストア機能を利用すれば、設定前後での実行プランを簡単に比較することができるので、その設定が妥当なのかどうかをチェックできて、大変便利です。

目次へ | 前のページへ | 次のページへ

事例1

SQLQualityは執筆とセミナーを通じて技術の啓蒙やエンジニアの育成支援も行っています
最新刊
SQL Server 2016 の教科書
SQL Server 2016 の教科書(ソシム)

弊社オリジナル制作の
SQL Server 2016 自習書も
マイクロソフトのサイトで公開中!
ダウンロードはこちら
セミナー風景
セミナー風景

ロングセラー
ASP.NET でいってみよう  SQL Server 2000 でいってみよう
ASP.NET でいってみよう
第7刷 16,500 部発行
SQL Server 2000 でいってみよう
第12刷 28,500 部発行
SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要
SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要(Amazon Kindle 書籍)

弊社執筆の
SQL Server 2014 自習書
マイクロソフトのサイトで公開中
目次はこちら

弊社執筆の
SQL Server 2012 自習書
マイクロソフトのサイトで公開中
ダウンロードはこちら
松本美穂のコラム
(公開活動などのお知らせ)

第60回:SQL Server 2017 自習書 No.3「SQL Server 2017 Machine Learning Services」のご案内
第59回:SQL Server 2017 自習書 No.2「SQL Server 2017 on Linux」のご案内
第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
第54回:「SQL Server 2016 プレビュー版 Reporting Services の新機能」自習書のお知らせ
第 53 回:SQL Server 2016 Reporting Services の新しくなったレポート マネージャーとモバイル レポート機能
第 52 回:SQL Server 2016 の自習書を作成しました!
第 51 回:PASS Summit と MVP Summit で進化を確信!
第 50 回:新しくなった Power BI(2.0)の自習書を作成しました!
第49 回:Excel 2016 の Power Query を使う
第 48 回:新しくなった Microsoft Power BI ! 無料版がある!!
第 47 回:「Microsoft Azure SQL Database 入門」 完成&公開!
第 46 回:Microsoft Power BI for Windows app からの Power BI サイト アクセス
第 45 回:Power Query で取得したデータを PowerPivot へ読み込む方法と PowerPivot for Excel 自習書のご紹介
第44回:「SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」ドキュメントを作成しました
第43回:SQL Server 2014 インメモリ OLTP 機能の上級者向けドキュメントを作成しました
第42回:Power Query プレビュー版 と Power BI for Office 365 へのクエリ保存(共有クエリ)
第41回:「SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要」自習書のお知らせです
第40回: SQL Server 2012 自習書(HTML版)を掲載しました
第39回: Power BI for Office 365 プレビュー版は試されましたか?
第38回: SQL Server 2014 CTP2 の公開
第37回: SQL Server 2014 CTP1 の自習書をご覧ください
第36回: SQL Server 2014 CTP1 のクラスター化列ストア インデックスを試す
第35回: SQL Server 2014 CTP1 のインメモリ OLTP の基本操作を試す
第34回: GeoFlow for Excel 2013 のプレビュー版を試す
第33回: iPad と iPhone からの SQL Server 2012 Reporting Servicesのレポート閲覧
第32回: PASS Summit 2012 参加レポート
第31回: SQL Server 2012 Reporting Services 自習書のお知らせ
第30回: SQL Server 2012(RTM 版)の新機能 自習書をご覧ください
第29回: 書籍「SQL Server 2012の教科書 開発編」のお知らせ
第26回: SQL Server 2012 の Power View 機能のご紹介
第25回: SQL Server 2012 の Data Quality Services
第24回: SQL Server 2012 自習書のご案内と初セミナー報告
第23回: Denali CTP1 が公開されました
第22回 チューニングに王道あらず
第21回 Microsoft TechEd 2010 終了しました
第20回 Microsoft TechEd Japan 2010 今年も登壇します
第19回 SQL Server 2008 R2 RTM の 日本語版が公開されました
第18回 「SQL Azure 入門」自習書のご案内
第17回 SQL Server 2008 自習書の追加ドキュメントのお知らせ
第16回 SQL Server 2008 R2 自習書とプレビュー セミナーのお知らせ
第15回 SQL Server 2008 R2 Reporting Services と新刊のお知らせ
第14回 TechEd 2009 のご報告と SQL Server 2008 R2 について
第13回 SQL Server 2008 R2 の CTP 版が公開されました
第12回 MVP Summit 2009 in Seattle へ参加

技術コミュニティでも活動中