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SQL Server 2014 実践シリーズ (HTML 版)
「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]

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2.10 ネイティブ コンパイル SP を簡単に作成する方法

ここでは、今回のポイントカード システムで、私たちがネイティブ コンパイル SP を作成したときに利用した方法を説明します。これを利用すれば、簡単にネイティブ コンパイル SP を作成することができるので、参考になると思います。

大まかな手順は次のとおりです。

  • アプリケーションから実行される SQL を、SQL Server Profiler でキャプチャする
  • キャプチャした SQL(sp_executesql)をクエリ エディターへ貼り付けて、パラメーター定義や実行ステートメントからネイティブ コンパイル SP を作成する
  • パラメーターで (var)char データ型を利用している場合は、n付きの n(var)char データ型へ変更する
  • ステートメント内で単一引用符(文字リテラル)を利用している場合は、Nプレフィックスを付ける
  • SELECT ステートメントで SELECT * を利用している場合は、列名を列挙するように変更する

◆ 実際の手順

次の .NET アプリケーション(VB.NETADO.NET)を例に、ネイティブ コンパイル SP を作成する方法を説明します。

00111

Using cn As New SqlConnection(cnstr)
    Using cmd As New SqlCommand()
        cn.Open()
        cmd.Connection = cn
        cmd.CommandText = "INSERT INTO t1 VALUES(@p1@p2@p3)"
        Dim p1 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p1", SqlDbType.Int)
        p1.Value = 1
        Dim p2 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p2", SqlDbType.NVarChar, 200)
        p2.Value = "A"
        Dim p3 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p3", SqlDbType.DateTime)
        p3.Value = DateTime.Now
        cmd.ExecuteNonQuery()
        cn.Close()
    End Using
End Using

これは、「t1」テーブル(intnvarchar(200)、datetime データ型の 3つの列がある場合)にデータを INSERT するコードです。

◆ SQL Server Profiler ツールで SQL をキャプチャする

上記のアプリケーションを実行するときに、SQL Server Profiler ツールを利用して、内部的に実行された SQL をキャプチャ(トレース)しますが、SQL Server Profiler ツールは、次のように Management Studio の[ツール]メニューから「SQL Server プロファイラー」をクリックして、起動することができます。

00112

起動後、[サーバーへの接続]ダイアログが表示されたら、接続したい SQL Server の名前を入力して、[接続]ボタンをクリックします。

00113

接続が完了すると、次のように[トレースのプロパティ]ダイアログが表示されるので、[実行]ボタンをクリックします。

00114

これで、SQL Server に対して実行されたすべての SQL をキャプチャできるようになるので、ここでアプリケーションを実行します。

アプリケーションを実行すると、次のように「Audit Login」(ログイン成功)や「RPC:Completed」(リモート プロシージャ コールの完了)が表示されます。

00115

RPC:Completed」をクリックすると、アプリケーションから内部的に実行された SQL を確認することができます。次のように sp_executesql でパラメーター化されたものになっていることを確認できます。

exec sp_executesql N'INSERT INTO t1 VALUES(@p1@p2@p3)'
                  ,N'@p1 int@p2 nvarchar(200), @p3 datetime'
                  ,@p1=1@p2=N'A'@p3='2014-06-24 16:38:06.853'

次に、この SQL をクエリ エディターへ貼り付けて、これをもとにネイティブ コンパイル SP を作成していきます。

◆ ネイティブ コンパイル SP の作成

ネイティブ コンパイル SP を作成するときは、次の基本構文を利用します。

-- ネイティブ コンパイル SP 雛形
CREATE PROC プロシージャ名
パラメーター定義
WITH
   NATIVE_COMPILATIONEXECUTE AS OWNERSCHEMABINDING
AS
BEGIN ATOMIC
 WITH TRANSACTION ISOLATION LEVEL SNAPSHOT
        LANGUAGE N'japanese')
     -- ここ SQL ステートメント貼り付ける
END

この構文の中へ、プロファイラーでキャプチャした sp_executesql の第2引数のパラメーター定義をプロシージャ名の後ろのパラメーター定義へ追加して、第1引数の SQL ステートメントBEGIN .. END ブロック内へ貼り付けます。

00116

◆ オブジェクト名にスキーマ名を付与する

次に、オブジェクト名(画面は t1)へスキーマ名を付与して、「dbo.t1」のように変更しますが、もしスキーマ名を省略している場合は、次のように「スキーマ バインドできません」エラーが表示されます。

00117

スキーマ名を付与した後、プロシージャ名へ任意の名前を付ければ、ネイティブ コンパイル SP の作成が完了です。

00118

◆ アプリケーションの修正(ADO.NET の場合)

ネイティブ コンパイル SP を作成した後は、アプリケーション側を変更しますが、次のように、SqlCommand オブジェクトの CommandText をネイティブ コンパイル SP の名前へ変更して、CommandType を「CommandType.StoredProcedure」へ指定するだけで完了です。

cn.Open()
cmd.Connection = cn
cmd.CommandType CommandType.StoredProcedure                この追加
cmd.CommandText = "ネイティブ コンパイル SP 名前変更"    この修正
Dim p1 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p1", SqlDbType.Int)
p1.Value = 1
Dim p2 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p2", SqlDbType.NVarChar, 200)
p2.Value = "A"
Dim p3 As SqlParameter = cmd.Parameters.Add("@p3", SqlDbType.DateTime)
p3.Value = DateTime.Now
cmd.ExecuteNonQuery()
00119

パラメーター(SqlParameter)に関しては、同じものを利用しているので、そのまま利用することができます。このように記述することで、ネイティブ コンパイル SP を実行することができ、内部的には次のように変換されて実行されています。

00120

EXEC で、ストアド プロシージャを呼び出して、パラメーターのデータ型が nvarchar の場合は、Nプレフィックスが付与された文字列に変換されて、実行されています。

Note: CommandType を Text にした場合は?
上の例では、SqlCommand の CommandType を「CommandType.StoredProcedure」へ変更して、CommandText へネイティブ コンパイル SP の名前を指定する方法をとりましたが、CommandType の既定値である「CommandType.Text」を利用しても、次のようにネイティブ コンパイル SP を実行することができます。
00121
しかし、この方法は、「CommandType.StoredProcedure」を利用するよりも性能が出ないので、利用しないことをお勧めします。詳しい性能比較については、次の項で説明します。

◆ パラメーターに char/varchar が利用できない ~ n付きへ変更する~

データベースの照合順序に Japanese_CI_AS(日本語版の SQL Server の既定の照合順序)など、コードページが「1252」以外のものを利用している場合には、ネイティブ コンパイル SP のパラメーターで char/varchar データ型を利用することができません。

00122

このように、ネイティブ コンパイル SP では、データベースの照合順序が Japanese_CI_AS の場合には、パラメーターのデータ型に char/varchar データ型を利用することができません。代わりに、nchar/nvarchar データ型(n 付きのデータ型)へ変更する必要があります。

なお、コード ページが「1252」の照合順序(Latin_~ など)を利用することで、char/varchar データ型を利用することもできますが、これについては後述します。

◆ プロシージャ内の単一引用符には Nプレフィックスが必要

データベースの照合順序に Japanese_CI_AS など、コードページが「1252」以外の照合順序を利用している場合には、ネイティブ コンパイル SP 内の単一引用符(文字列リテラル)には、Nプレフィックスを付ける必要があります。もし、Nプレフィックスを付けていない場合は、次のようにエラーになります。

00123

このエラーを回避するには、N'AAA' のように、文字列を Nプレフィックスで囲むようにします。

Nプレフィックスは、nchar/nvarchar データであることを示すためのものなので、Nプレフィックスがない場合は、char/varchar データと見なされてしまって、先ほどと同じエラーが発生してしまいます。このエラー メッセージは、私自身がよく目にして、エラー メッセージだけだと理由が一瞬分からないことがあったので、覚えておくことをお勧めします。例えば、日付データを次のように単一引用符で囲んだ場合にも同様のエラーが表示されます。

00124

この場合も、日付を N'2014/06/14' のように Nプレフィックスで囲まなければなりません。

◆ SELECT * を利用できない ~列名を列挙するように変更する~

SELECT ステートメントをネイティブ コンパイル SP 化する場合は、「SELECT *」(* を利用して全ての列の取得)を利用することができません。ネイティブ コンパイル SP では、次のように「SELECT *」を利用すると、構文エラーになります。

00125

SELECT ステートメントの選択リストは、「SELECT col1, col2, …」のように、取得したい列名をすべて列挙しなければなりません。

00126

すべての列を手書きで列挙するのは、取得したい列がたくさんある場合には面倒なので、私はこれを回避するために、オブジェクト エクスプローラーで次のように該当テーブルを右クリックして、[上位 1000件の選択]をクリックして、列名を自動生成させたものを利用しました。

00127

これを利用すれば、簡単に列名を列挙することができます。

Note: ネイティブ コンパイル SP の dll が作成される場所
ネイティブ コンパイル SP は、CREATE PROC でストアド プロシージャを作成したときに、コンパイルされた DLL が作成されます。この DLL は、SQL Server をインストールしたフォルダーの Data\xtp フォルダー配下に格納されています。
00128
xtp_p_7_405576483.dll」形式のファイルが、コンパイルされた DLL です。_7 の部分はデータベース ID、_405576483 はオブジェクトID で、オブジェクトIDは、次のように sysobjects システム テーブルを参照して確認することもできます。
00129
「.c」拡張子のファイルは、ネイティブ コンパイル SP が C言語に変換されたソース コードになっていて、次のように中身を参照することも可能です。
00130

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