松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]
Reporting Services を移行する手順は、ケース2 の場合とほとんど同じで、次のように行います(移行元は、SQL Server 2005/2008/2008 R2/2012/2014 のすべてで共通で、SQL Server 2005 の Reporting Services でも SQL Server 2016 へ移行することができます)。
1.移行元で、ReportServer と ReportServerTempDB データベースをオンライン バックアップする(クエリ エディターから BACKUP DATABASE ステートメントを実行)
2.移行元で、暗号化キーをバックアップする(Reporting Services 構成マネージャーから実行)
3.移行先で、Reporting Services をインストールするときに、「インストールと構成」ではなく、「インストールのみ」を選択する
4.移行先で、データベースを復元する(RESTORE DATABASE)
5.移行先で、暗号化キーを復元する
6.移行先で、Reporting Services を構成する(Reporting Services 構成マネージャーを利用)
7.移行先で、電子メールの設定を行う(移行元で設定している場合)
まずは、移行元で、Reporting Services の実体(レポート本体や、レポートに関する各種の設定)となる、SQL Server 上の ReportServer および ReportServerTempDB データベースをオンライン バックアップします。次のように、Management Studio のクエリ エディターで、BACKUP DATABASE ステートメントを実行します(ファイル名やバックアップ先のパスは皆さんの環境に合わせて変更してください)。
次に、移行元で、暗号化キーをバックアップします。暗号化キーのバックアップは、「Reporting Services 構成マネージャー」ツールを利用して、次のように[暗号化キー]ページから行います(画面は、SQL Server 2008 ですが、他のバージョンでもほとんど同じ操作で行えます)。
このページでは、[バックアップ]をクリックして、[暗号化キーのバックアップ]ダイアログが表示されたら、[パスワード]と[パスワードの確認]に任意のパスワードを設定し、[ファイルの場所]にバックアップ先のファイル名を指定します(画面は C:\backup フォルダーの下に rs暗号化キー.snk というファイル名を指定)。ここで設定するパスワードは、複雑なパスワード(大文字・小文字と @などの特殊文字を入れたりするなど)を指定する必要があり、これを行っていない場合は、次のように失敗します。
バックアップが成功した場合は、次のように表示されます。
また、設定したパスワードは、新規サーバーで復元する際に必要になるので覚えておいてください。バックアップしたファイル(~.snk)は、新規サーバーからアクセス可能なファイル サーバーや USB HDD など持ち運び可能なメディアに保存します。
次に、移行先で Reporting Services をインストールします。
インストール時の[Reporting Services の構成]ページでは、次のように「インストールのみ」を選択するようにします。
移行先での Reporting Services のインストールが完了したら、次に、ReportServer および ReportServerTempDB データベースをバックアップから復元します。復元には、RESTORE DATABASE ステートメントを次のように実行します(復元先のパスには、SQL Server 2016 の Reporting Services の既定のインスタンスが、既定でインストールされるフォルダーを指定していますが、任意の場所に変更することも可能です)。
データベースの復元が完了した後は、Reporting Services 構成マネージャーを利用して、Reporting Services にデータベースを認識させます。これを行うには、次のように[データベース]ページで、[データベースの変更]をクリックします。
[データベースの変更]ウィザードが起動したら、[既存のレポート サーバー データベースを選択する]を選択して、[次へ]ボタンをクリックします。
次のページでは、[サーバー名]に移行先の SQL Server 2016 のサーバー名を選択して、[次へ]ボタンをクリックします。
次のページでは、[レポート サーバー データベース]で「ReportServer」データベースを選択して、[次へ]ボタンをクリックします。
次のページでは、[認証の種類]でレポート サーバーがデータベースへアクセスするときの認証方法を選択して(既定は「サービス資格情報」で、サービス アカウントが接続しに行く設定)、[次へ]ボタンをクリックします。
次のページでは、[次へ]ボタンをクリックすると、データベースの変更が開始されます。
データベースの変更中は、次のように表示されます。
データベースの変更が完了すると、次のように表示されます。
次に、暗号化キーをバックアップから復元します。これは、次のように[暗号化キー]ページで[復元]ボタンをクリックします。。
[暗号化キーの復元]ダイアログでは、[パスワード]にバックアップ時に指定したパスワードを入力して、[キー ファイル]にバックアップした暗号化キー(.snk)を指定します。
復元に成功すると、次のように表示されます。
暗号化キーの復元が完了したら、次は Reporting Services を構成します。引き続き Reporting Services 構成マネージャーを利用して、次のように[Web サービス URL]ページを開きます。
このページでは[適用]ボタンをクリックします。これでレポート サーバー(http://~/ReportServer)が構成されます。構成が成功した場合には、次のように表示されます。
次に、[Web ポータル URL]ページを開いて、[適用]ボタンをクリックします。
これでレポート マネージャー(http://~/Reports)が構成されます。
Reporting Services の電子メールの設定に関しては、手動で再設定をする必要があります。
以上で、作業が完了です。これで移行元と同じようにレポートを参照できるようになります。
ただし、レポート内のデータソースや、共有データソースに、移行元のマシン名が埋め込まれている場合には、そこを移行先のマシン名に修正する必要があります(マシン名ではなく、localhost などを指定している場合は修正は不要です)。
レポート マネージャー(/Reports)のポータルは、SQL Server 2016 からは Datazen というソフトウェア(モバイル レポート機能)を統合したことによって、見栄えが変わっていますが、レポート サーバー(/ReportServer)に関しては、以前の SQL Server と同様に利用できます。
なお、SQL Server 2016 からは ClickOnce のレポート ビルダーの提供はなくなって、別途ダウンロード/インストールする形に変わりました。
レポート ビルダーのダウンロードは、次の URL から行うことができます。
Microsoft SQL Server 2016 レポート ビルダー
https://www.microsoft.com/ja-JP/download/details.aspx?id=53613
SQL Server 2016 からは、Datazen ソフトウェアとの統合によって、モバイル レポート機能が強化されていますが、これについては、SQL Server 2016 自習書シリーズの No.3「Reporting Services の新機能」編で詳しく説明しているので、こちらもぜひご覧いただければと思います。
構成後は、レポートを参照できるだけでなく、レポートのプロパティで設定したセキュリティ(ロール)や、キャッシュ設定、サブスクリプションについても移行元と同じように利用できます。サブスクリプションに関しては、次のように SQL Server Agent のジョブも自動作成されています(Reporting Services を構成すると、ジョブも自動作成されます)。
移行後の注意点としては、レポートのセキュリティ設定で Windows のローカル ユーザーを利用している場合です。これは、次のような状況です。
Windows のローカル ユーザーの場合は、マシン(OS)が変わったとすると、同じ名前のユーザーを作成したとしても、内部的な SID(Security ID)が異なってしまうので、Reporting Services にとっては、認識できないユーザーとなってしまいます。このため、新規サーバーでは、Windows のローカル ユーザーが全く表示されない形になります。
これを回避する方法はないので、Windows のローカル ユーザーを利用している場合は、再設定をする必要があります。
Active Directory ドメインのユーザーに関しては、移行元と移行先が同じドメインに参加している場合には、問題なくセキュリティ設定が引き継がれますが、移行先が異なるドメインや、ワークグループ環境の場合には、ドメイン ユーザーに関しても、認識できないユーザーとなって、表示されない形になります。この場合も再設定が必要になります。
サブスクリプションの所有者が Windows のローカル ユーザーの場合や、Active Directory ドメインのユーザーで、移行先が異なるドメインや、ワークグループ環境の場合には、サブスクリプションが ”編集” できないということが発生します。これは次のような状況です。
サブスクリプションを編集しようとすると、古い所有者(移行元でのサブスクリプションの所有者)が存在しないので、「認識できません」というエラーとなってしまいます。
これを回避するには、サブスクリプションを削除して、再作成をするか、Subscriptions テーブル(Reporting Services が利用しているシステム テーブル)を修正するようにします。Subscriptions テーブルは、ReportServer データベース内に存在します。
このテーブルには、OwnerID 列があり、ここにサブスクリプションの所有者の ID が格納されています。この ID は、Reporting Services 上の ID で、Users テーブルで管理されています。
Users テーブルでは、UserID 列が Reporting Services 上の ID(Reporting Services で管理するユーザーを識別するための ID)、Sid 列に Windows 上の SID(Security ID)が格納されています。この Users テーブルにユーザーを追加するには、次のように Reporting Services の Web ポータル(レポート マネージャー)での[サイトの設定]ページや、各レポートの[セキュリティ]ページから行えます。
このように移行先で登録した新しいユーザーを利用して、サブスクリプションの所有者を変更するようにすれば、サブスクリプションを編集できない問題を解決できます。これを行うには、次のように UPDATE ステートメントを実行します。
Subscriptions テーブルの OwnerID 列を、新しい所有者の UserID に変更しています。これを行えば、移行先でもサブスクリプションを編集できるようになります。
以上のように、Reporting Services の移行は、非常に簡単です。SQL Server 2005 からの移行も可能で、SQL Server 2005 のときには、Reporting Services の動作に IIS と ASP.NET が必須でしたが、SQL Server 2008 以降では IIS を必要としないアーキテクチャに変わっています(SQL Server 2016 に移行後は、IIS が不要になります)。
その他の Reporting Services の移行に関する情報は、オンライン ブックの以下のトピックが参考になると思います。
Reporting Services の旧バージョンとの互換性
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143251.aspx
SQL Server 2016 で廃止された SQL Server Reporting Services の機能
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms144231.aspx
SQL Server 2016 における SQL Server Reporting Services の非推奨機能
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143509.aspx
SQL Server 2016 における SQL Server Reporting Services の重大な変更
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143380.aspx
SQL Server 2016 における SQL Server Reporting Services の動作変更
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ms143200.aspx
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第59回:SQL Server 2017 自習書 No.2「SQL Server 2017 on Linux」のご案内
第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
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