松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]
この章では、このドキュメントで扱う 3つのケースのうちの「ケース3 新規サーバー(別マシン)への移行」(マイグレーション)について説明します。
このケースは、ハードウェアの保守切れや老朽化などによって、新規サーバーの購入(ハードウェア リプレース)を行って、そのマシンへ SQL Server 2016 をインストールし、データベースや各種の設定を移行(マイグレーション)する方法です。弊社のお客様で一番多いのが、このケースです。ハードウェア リプレースを機会に、32ビットから 64ビット環境へ移行したり、SSD やフラッシュ ストレージなどの高速ストレージ環境へ移行したりするというお客様も多くいらっしゃいます。
この方法を利用すれば、SQL Server 2005 のデータベースを SQL Server 2016 に移行することもできます(3章と 4章で紹介したインプレース アップグレードでは、SQL Server 2005 は未対応でした)。
また、32ビット環境のオンプレミス上の SQL Server 2005 や 2008、2008 R2、2012、2014 などを、Microsoft Azure(クラウド)上の仮想マシン(Windows Server 2012 や 2012 R2、2016)で動作させている SQL Server 2016(64ビット)へ移行するといったことも簡単に行うことができます。
こうしたマシンをまたがった場合でも、SQL Server では簡単に移行を行うことができます。データベースの移行は、標準のバックアップと復元機能で行うことができ、バックアップと復元機能を利用すれば、別マシンであっても簡単にデータベースを複製することができ、32ビットから 64ビットへ変更したとしても、移行先の OS が変わったとしても、オンプレミスからクラウドに変わったとしても、簡単に移行することができます。
各種の設定(ログイン アカウントやジョブ、警告、リンク サーバーなどの設定)に関しても、スクリプト生成機能を利用することで、簡単に移行することができます。
このケースでの移行手順の概要は、次のとおりです
1.Data Migration Assistant による事前チェックを行う
2.新規サーバーへ Windows Server 2012(X64版)以上の OS をインストールする(移行元と同じ OS である必要はありません)
3.Active Directory ドメイン環境の場合は、新規サーバーをドメインに参加させる
4.SQL Server 2016 をインストールするためのソフトウェア要件を確認する
5.OS は、Windows Server 2012 以降の X64 版をサポート、Windows Server 2012 R2 の場合は KB 2919355 が必要など。データベース メール機能を利用している場合は、.NET Framework 3.5 SP1 をインストールしておく必要がある
6.新規サーバーへ SQL Server 2016 をインストールする
7.新規サーバーへ SQL Server 2016 の最新の修正プログラム(CU や Service Pack など)をインストールする
8.CU2 には、性能向上に関する修正が入っているので、できる限り最新の修正プログラムを適用しておくことをお勧めします。
9.Reporting Services を利用している場合は、SP1 に対する重要な更新プログラムがあるので、CU4(SP1+CU1)以上を適用しておくことをお勧めします。
10.Management Studio(管理ツール)の最新版をダウンロードして、インストールする(オプション)
11.移行元サーバー(SQL Server 2005/2008/2008 R2/2012/2014)のデータベースを、新規サーバー(SQL Server 2016)へ移行する(バックアップと復元機能を利用)
12.統計(Statistics)を更新する
13.フルテキスト インデックスを再構築する(フルテキスト検索機能を利用している場合)
14.データベースの互換性レベルを 130 へ上げる(オプション)
15.互換性レベルの影響についてはクエリ ストア機能を利用することで簡単にチェック可能(実行プランの比較や、プラン強制もできる)。
16.データベースの所有者を確認/設定する(∵所有者が空の場合には、データベース ダイアグラムと後述の SQL CLR オブジェクトが動作しないため)
17.SQL CLR オブジェクトの権限セットで「UNSAFE」または「外部」を利用している場合は、TRUSTWORTHY オプションを有効化する
18.システム データベース関連のオブジェクトを移行する(ログイン アカウントやサーバー ロール、tempdb の設定、リンク サーバー、ユーザー定義エラー、構成オプション、データベース メール、ジョブ、警告、オペレーターなどのうち、移行元で設定を変更/利用しているものがある場合は、それらを移行する)
19.レジストリに格納されている情報を再設定する(サービスの自動起動やサービス アカウント、認証モード、TCP ポート番号、起動時パラメーターでのトレースフラグの設定などのうち、移行元で設定を変更しているものがある場合は、それらを再設定する)
20.OS の設定で、移行元で変更しているものがある場合は、それらを再設定する(フォルダー構成や、NTFS アクセス許可、ユーザーの権利、共有フォルダーなど)
21.メンテナンス プラン(保守計画)を利用している場合は、メンテナンス プランを再作成する
22.BIDS(Business Intelligence Development Studio)または SSDT-BI(SQL Server Data Tools - Business Intelligence)を利用している場合は、SSDT の最新版をダウンロードして、インストールする(オプション)
23.Integration Services を利用している場合は、SSIS パッケージを移行する
24.SQL Server Audit やリソース ガバナー、パフォーマンス データ コレクションなどのサーバー管理機能を利用している場合は、これらを再設定する
25.レプリケーションやログ配布、可用性グループ、データベース ミラーリングなどのサーバー間の連携機能を利用している場合は、これらを再設定する
前述したように、新規サーバーへのデータベースの移行は、標準のバックアップと復元機能を利用して、簡単に行うことができます。データベース ダイアグラムや SQL CLR オブジェクトを利用している場合は、追加の作業が必要になりますが、これらはコマンドを 1つ 2つ実行するだけなので簡単な作業です。
各種の設定(システム データベースやレジストリに格納されている設定、メンテナンス プランなど)は、移行元で設定を変更していたり、該当オブジェクトを利用したりしている場合には、再設定/再作成が必要になります。システム データベースに格納されているものに関しては、ほとんどのものが GUI 操作でスクリプト生成することができるので、簡単に移行することができます。レジストリに格納されているものに関しては、SQL Server はレジストリをほとんど利用していないので、こちらも再設定は簡単です。
この移行方法を利用するメリットは、OS を簡単に変更できること(Windows Server 2003/2003 R2 や Windows Server 2008/2008 R2 から Windows Server 2012 や 2012 R2、Windows Server 2016 へ変更するなど)、クロス プラットフォーム(移行元が 32ビットで、移行先が 64ビットなど)でも関係がないこと、Microsoft Azure などのクラウド環境であったとしてもデータベースの移行が行えること、SQL Server 2005 からの移行にも対応していることです。
以降では、1つ 1つの手順を詳しく説明します。
第60回:SQL Server 2017 自習書 No.3「SQL Server 2017 Machine Learning Services」のご案内
第59回:SQL Server 2017 自習書 No.2「SQL Server 2017 on Linux」のご案内
第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
第54回:「SQL Server 2016 プレビュー版 Reporting Services の新機能」自習書のお知らせ
第 53 回:SQL Server 2016 Reporting Services の新しくなったレポート マネージャーとモバイル レポート機能
第 52 回:SQL Server 2016 の自習書を作成しました!
第 51 回:PASS Summit と MVP Summit で進化を確信!
第 50 回:新しくなった Power BI(2.0)の自習書を作成しました!
第49 回:Excel 2016 の Power Query を使う
第 48 回:新しくなった Microsoft Power BI ! 無料版がある!!
第 47 回:「Microsoft Azure SQL Database 入門」 完成&公開!
第 46 回:Microsoft Power BI for Windows app からの Power BI サイト アクセス
第 45 回:Power Query で取得したデータを PowerPivot へ読み込む方法と PowerPivot for Excel 自習書のご紹介
第44回:「SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」ドキュメントを作成しました
第43回:SQL Server 2014 インメモリ OLTP 機能の上級者向けドキュメントを作成しました
第42回:Power Query プレビュー版 と Power BI for Office 365 へのクエリ保存(共有クエリ)
第41回:「SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要」自習書のお知らせです
第40回: SQL Server 2012 自習書(HTML版)を掲載しました
第39回: Power BI for Office 365 プレビュー版は試されましたか?
第38回: SQL Server 2014 CTP2 の公開
第37回: SQL Server 2014 CTP1 の自習書をご覧ください
第36回: SQL Server 2014 CTP1 のクラスター化列ストア インデックスを試す
第35回: SQL Server 2014 CTP1 のインメモリ OLTP の基本操作を試す
第34回: GeoFlow for Excel 2013 のプレビュー版を試す
第33回: iPad と iPhone からの SQL Server 2012 Reporting Servicesのレポート閲覧
第32回: PASS Summit 2012 参加レポート
第31回: SQL Server 2012 Reporting Services 自習書のお知らせ
第30回: SQL Server 2012(RTM 版)の新機能 自習書をご覧ください
第29回: 書籍「SQL Server 2012の教科書 開発編」のお知らせ
第26回: SQL Server 2012 の Power View 機能のご紹介
第25回: SQL Server 2012 の Data Quality Services
第24回: SQL Server 2012 自習書のご案内と初セミナー報告
第23回: Denali CTP1 が公開されました
第22回 チューニングに王道あらず
第21回 Microsoft TechEd 2010 終了しました
第20回 Microsoft TechEd Japan 2010 今年も登壇します
第19回 SQL Server 2008 R2 RTM の 日本語版が公開されました
第18回 「SQL Azure 入門」自習書のご案内
第17回 SQL Server 2008 自習書の追加ドキュメントのお知らせ
第16回 SQL Server 2008 R2 自習書とプレビュー セミナーのお知らせ
第15回 SQL Server 2008 R2 Reporting Services と新刊のお知らせ
第14回 TechEd 2009 のご報告と SQL Server 2008 R2 について
第13回 SQL Server 2008 R2 の CTP 版が公開されました
第12回 MVP Summit 2009 in Seattle へ参加