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Microsoft SQL Server 2016 実践シリーズ（HTML 版）
「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]

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4.13　Analysis Services の新規サーバーへのアップグレード

Analysis Services（OLAP キューブ）を新規サーバーへ完全複製して、その後 SQL Server 2016 へアップグレードする場合は、追加の手順が必要になりますが、Reporting Services ほど手順が多いわけではありません。ここではその作業を説明します。

なお、SQL Server 2012 からは、インメモリ BI を実現できる「表形式モード」（Tabular Mode）も登場していますが、ここでは従来ながらの「多次元モード」（Multi Dimensional Mode、OLAP キューブ）での移行方法を説明します。

◆ 旧マスターでデータベースのオンラインバックアップ

Analysis Services では、オフラインバックアップではなくて、オンラインバックアップでデータベースをバックアップするのがお勧めです。オンラインバックアップは、次のように Management Studio で Analysis Services に接続して行います（Analysis Services サービスは停止せずに、起動したまま実行します。画面は SQL Server 2008 ですが、他のバージョンでも同じように操作できます）。

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データベースを右クリックして、［バックアップ］をクリックし、［バックアップファイル］へバックアップ先のファイル名をフルパスで入力します。［圧縮を利用する］はチェックを付けておくことをお勧めします（バックアップファイルを圧縮することができます）。

このように、バックアップファイルを圧縮できることが、オンラインバックアップをお勧めする理由で、特に Analysis Services のデータベースは巨大になりがちなので、できる限り、データベースをコンパクトにして、移動したほうが移動時間（ダウンタイム）を少なくできるので、お勧めです。

Note：オフラインバックアップはお勧めではない
Analysis Services の多次元データベース（キューブ）の実体は、OS 上のファイル群です。SQL Server 2008 の場合は、既定では、以下のフォルダーに格納されています。

C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSAS10.MSSQLSERVER\OLAP\Data

オフラインバックアップの場合は、Analysis Services サービスを停止した上で、この Data フォルダーを丸ごとコピーして、新規サーバー上へ丸ごと復元（上書きコピー）すれば、旧マスターと同じようにデータベースを利用できるようになります。ただし、Data フォルダーをコピーするときには、直下の TMP ファイルのコピーに失敗するので、これを除外してコピーする必要があります。Analysis Services の場合は、オンラインバックアップのほうが簡単で分かりやすいので、オンラインバックアップを利用することがお勧めになります。

◆ 新規サーバーでのオンラインバックアップからの復元

旧マスター側で取得したオンラインバックアップは、次のように Management Studio で Analysis Services に接続して、復元できます（Analysis Services サービスを起動した状態で実行します。画面は SQL Server 2008 の場合）。

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［データベース］フォルダーを右クリックして、［復元］をクリックし、［バックアップファイル］へバックアップファイルをフルパスで入力します。［データベースの復元］には復元後のデータベース名を入力して、［OK］ボタンをクリックします。

復元が完了すると、旧マスターと同じようにデータベースを参照できるようになります。

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◆ Analysis Services の構成オプション

旧マスターで、Analysis Services の構成オプションを変更している場合は、新規サーバー側でも再設定をする必要があります。

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なお、これらの設定は、「msmdsrv.ini」という設定ファイルに格納されていて、SQL Server 2008 の場合は、既定で次のフォルダーに作成されています。

C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSAS10.MSSQLSERVER\OLAP\Config

SQL Server 2008 R2 の場合は「MSAS10.MSSQLSERVER」の部分が「MSAS10_50.～」、SQL Server 2012 では「MSAS11.～」、SQL Server 2014 では「MSAS12.～」に代わります。

多くの構成オプションを変更している場合は、このファイルをもとに修正すると、作業が楽になると思います。

以上で、作業が完了です。これで旧マスターと同じように Analysis Services（OLAP キューブ）を利用できるようになります。

◆ 手順のまとめ

作業手順をまとめると、次のようになります。

旧マスターで、Analysis Services のデータベースをオンラインバックアップする
新マスターで、オンラインバックアップから復元する
Analysis Services の構成オプションを変更している場合は、再設定する
SQL Server 2016 へのアップグレードを実施する（第3章の 3.26 を参照）

◆ Windows のローカルユーザーを利用している場合の注意点

新規サーバーへの複製後の注意点としては、Analysis Services のセキュリティ設定（ロール）で Windows のローカルユーザーを利用している場合です。これは、次のような状況です。

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Windows のローカルユーザーの場合は、マシン（OS）が変わったとすると、同じ名前のユーザーを作成したとしても、内部的な SID（Security ID）が異なってしまうので、Analysis Services にとっては、認識できないユーザーとなってしまいます。このため、新規サーバーでは、Windows のローカルユーザーの名前が不明になるので、SID で表示される形になります。

これを回避する方法はないので、Windows のローカルユーザーを利用している場合は、再設定をする必要があります。これは、あくまでも Windows のローカルユーザーを利用している場合のみの話しで、Active Directory ドメインのユーザーであれば問題なく複製されている（復元できている）ので、再設定をする必要はありません。

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