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Microsoft SQL Server 2016 実践シリーズ (HTML 版)
「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 実践シリーズの「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。なお、記載している内容は、2016年 12月時点での情報になります。[2018年12月29日]

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4.1 ケース2「新規サーバー(別マシン)へのアップグレード」

この章では、このドキュメントで扱う 3つのケースのうちの「ケース2 新規サーバー(別マシン)へのアップグレード」について説明します。

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前の章のケース1は、同一マシンでの単純アップグレードでしたが、このケースは別マシンハードウェア リプレースによる新規サーバーの導入)を利用したアップグレードです。ケース1は、単純なアップグレード(以前の SQL Server を上書き)なので、元の環境を残せないのがデメリットでしたが、このケースでは、旧システム環境を残すことができます(万が一のアップグレード失敗時に元の環境へ簡単に戻すことができます)。

現在のマスターと同じ名前」の新規サーバーを、同じドメイン内に構築したい場合には、この方法が一番簡単で確実です。この方法は、あくまでも同じ名前の新規サーバーを同じドメイン内に作成できること、サービス アカウントが同じドメイン ユーザーであることが条件になるので、異なるドメインやワークグループ環境、違う名前の新規サーバーを構築する場合には、次の章で説明する「ケース3 別マシンへの移行」(マイグレーション)を利用する必要があります。

また、クロス プラットフォーム(32ビットから 64ビットへの変更)にも対応していないので、この場合も「ケース3 別マシンへの移行」を利用する必要があります。

◆ アップグレード手順の概要

このケースでのアップグレード手順の概要は、次のとおりです。

1.現在のマスター環境丸ごと新規サーバーへ複製する

 - 現在のマスターでオフライン バックアップ(全データベース)を取得する
  (ユーザー データベースに関しては、オンライン バックアップでも可)
  - 現在のマスターを停止して、ネットワークから切り離す(旧マスターとなる)
  - 新規サーバーOS をインストールし、マシン名を旧マスターと同じ名前へ変更する
   (インストールする OS は、旧マスターと異なるものでも可。
   異なる OS を利用する場合は、SQL Server を動作させるための SP 要件も確認必須)
  - 新規サーバーActive Directoryドメインへ参加させる
  - 新規サーバーへ旧マスターと同じバージョンの SQL Server をインストールする
  - 旧マスターの SQL Server にインストール済みの修正プログラムを、新規サーバーにも
   インストールする  - 新規サーバーの SQL Server を停止する
  - 旧マスターで取得したオフライン バックアップを上書きコピーする(復元する)
  ユーザー データベースをオンライン バックアップで取得している場合は、SQL Server
  の起動後に、該当データベースを復元する  - 新規サーバーの SQL Server を起動する
  - レジストリに格納されている情報を再設定する(TCP ポート番号や起動時パラメーター
   でのトレースフラグ設定などのうち、旧マスターで設定を変更しているものがある場合は
   それらを再設定する)
  - OS の設定で、旧マスターで変更しているものがある場合は、それらを再設定する
  (フォルダー構成や、NTFS アクセス許可、ユーザーの権利、共有フォルダーなど)

以上で旧マスターとまったく同じ環境を丸ごと新規サーバー上で動作させることができます。

2.Data Migration Assistantによる事前チェックを行う

3.SQL Server 2016 へのアップグレード要件を確認する(アップグレード可能な Service Pack を確認/インストールする)

4.SQL Server 2008 なら SP4、SQL Server 2008 R2 なら SP3、SQL Server 2012 なら SP2 が必要。OS に Windows Server 2003 や 2003 R2、2008、2008 R2 を利用している場合は、Windows Server 2012 以上にアップグレードする。

5.新規サーバーSQL Server 2016 へアップグレードする

6.SQL Server 2016 最新の修正プログラム(CU や Service Pack など)をインストールする

7.CU2 には、性能向上に関する修正が入っているので、できる限り最新の修正プログラムを適用しておくことをお勧めします。

8.Reporting Services を利用している場合は、SP1 に対する重要な更新プログラムがあるので、CU4(SP1+CU1)以上を適用しておくことをお勧めします。

9.Management Studio(管理ツール)の最新版をダウンロードして、インストールする(オプション)

10.統計(Statistics)を更新する

11.データベースの互換性レベルを 130 へ上げる(オプション)

12.互換性レベルの影響についてはクエリ ストア機能を利用することで簡単にチェック可能(実行プランの比較や、プラン強制もできる)。

13.BIDS(Business Intelligence Development Studio)や SSDT-BI(SQL Server Data Tools - Business Intelligence)を利用している場合は、SSDT の最新版をダウンロードして、インストールする(オプション)

このケースは、手順1の「丸ごと複製」がポイントになり、同じドメイン内で、同じ名前の新規サーバー、同じサービス アカウントを利用している場合であれば、この丸ごと複製を簡単に行うことができます(SQL Server のオフライン バックアップを復元するだけで複製できます)。

丸ごと複製が完了した後は、前の章と同様、SQL Server 2016 へのアップグレード(インプレース アップグレード)を行う手順になります(この手順は、前の章と全く同じです)。

以降では、丸ごと複製を行う際の、具体的な操作方法を説明します。丸ごと複製時のポイントとしては、Active Directoryドメインのユーザーではなく、Windows のローカル ユーザーを利用している設定があるかどうかです。Windows のローカル ユーザーに関しては、マシンが別のものになると、たとえ同じ名前のマシンでも、同じユーザーを作成したとしても、内部的な SID(Security ID)が異なるものが割り当てられるので、設定が複製できないということが発生します(Active Directory ドメイン ユーザーであれば、この問題は発生しません)。どういった場面で Windows のローカル ユーザーが利用される可能性があるかについても、次項以降で説明します。

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