Microsoft SQL Server 2016 実践シリーズ （HTML 版）
「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」

3.19　ログ配布のアップグレード

ログ配布は、セカンダリ（スタンバイ サーバー）側から先にアップグレードすることで、以前のバージョンで利用していたログ配布の設定を引き続き利用することができます。セカンダリをアップグレード中でも、（旧バージョンの）プライマリ サーバーは、引き続き利用することができます（ダウンタイムを最小限に抑えられます）。注意点としては、アップグレード中は、復旧状態オプションの STANDBY（スタンバイ）がサポートされていないことです。したがって、アップグレードを行う前に、セカンダリの［トランザクション ログの復元］タブで、次のように［復旧モードなし］（NORCOVERY）へ変更しておく必要があります（以下の画面は SQL Server 2008 ですが、他のバージョンでも同じように操作できます）。

この設定は、両方のサーバーのアップグレードが完了した後に、元に戻す（STANDBY に戻す）ことができます。

もし、STANDBY のまま、セカンダリのアップグレードを行った場合は、次のように Restore（復元）ジョブでエラーになってしまいます。

このエラーを解消するには、プライマリ側のログ配布の設定で、STANDBY から NORECOVERY（復旧モードなし）へ変更するようにします（変更後、次にジョブが定期実行されるタイミングでエラーが解消されます）。このように、ログ配布をアップグレードするにあたっては、STANDBY を利用している場合は、一度、NORECOVERY へ変更しておく必要があります（このエラーのようにアップグレードの実行した後ではなく、実行する前に変更しておくことをお勧めします）。

プライマリからアップグレードしてしまった場合

もし、ログ配布をプライマリからアップグレードしてしまった場合は、次のようにセカンダリの Restore ジョブでエラーが記録されてしまいます。

メッセージには「メディア ファミリを処理できません」と記録されていて、アップグレードしたプライマリ（SQL Server 2016）側のバックアップ ファイルの形式が、セカンダリ側で認識できないために発生しています。これを解消するには、セカンダリも SQL Server 2016 へアップグレードします。アップグレードが完了した後は、（バックアップ ファイルを認識できるようになるので）Restore ジョブが正常に動作するようになり、ログ配布を以前と同じように利用していくことができます。

ローリング アップグレードを行う場合

セカンダリを SQL Server 2016 へアップグレードした後に、このセカンダリをプライマリへロール変更することで、さらにダウンタイムを最小限にすることもできます。新プライマリがユーザーからの処理を引き続き処理できるようになり、その間に旧プライマリ（現在のセカンダリ）を SQL Server 2016 へアップグレードするという形です。この方法については、オンライン ブックの以下のトピックに記載されているので、参考になると思います。

SQL Server 2016 へのログ配布のアップグレード
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cc645954.aspx