SQL Server 2014 実践シリーズ （HTML 版）
「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」

5.11　バックアップ／復元で移行できるもの／できないもの

RESTORE DATABASE ステートメントによるデータベースの復元では、該当データベース内のオブジェクトをすべて復元することができるので、以下のオブジェクトを移行することができます。

このように、データベース内に含まれているものは、ほぼすべてを移行することができ、テーブルやテーブル内のデータ、制約、インデックス、ビュー、ストアド プロシージャ、トリガー、データ パーティションなど、主要なオブジェクトは、何の問題もなく利用することができます。

前述したように、統計に関しては、統計の更新（sp_updatestats）、フルテキスト インデックスに関しては、再構築（カタログの再構築とインデックス作成の開始）を行っておくことがお勧めになります。

データベース ダイアグラムは、データベースの所有者を設定しておく必要があります。

SQL CLR オブジェクトは、権限セットが UNSAFE／外部の場合は、TRUSTWORTHY オプションを有効化して、データベースの所有者を設定しておく必要があります（権限セットが SAFE の場合には、データベースを復元するだけで .dll も自動復元されるので、SQL CLR オブジェクトをそのまま利用することができます）。

移行することはできても、追加の作業が必要になるのが、オブジェクト権限とデータベース ユーザーです。データベース ユーザーは、ログイン アカウントとマッピングされるものですが、ログイン アカウントは、システム データベースである「master」内に含まれるものになるので、これを再作成しないと動作させることができません。

◆ バックアップ／復元では移行できないオブジェクト

データベースの復元は、あくまでも "該当データベースのみ" の移行になるので、システム データベース（master や msdb）に格納される情報や、レジストリに格納される情報については、移行が完了していません。したがって、データベースを復元しただけでは、主に次の機能を利用することができません。

• オブジェクト権限とデータベース ユーザー
• システム データベース関連のオブジェクト（ログイン アカウント、サーバー ロール、tempdb の設定、リンク サーバー、ユーザー定義エラー、構成オプション、ジョブ、警告、オペレーター、データベース メールなど）
• レジストリに格納された設定情報（サービスの自動起動やサービス アカウント、認証モード、TCP ポート番号、起動時パラメーターでのトレースフラグの設定など）
• メンテナンス プラン（保守計画）、Integration Services の SSIS パッケージ）
• SQL Server Audit やリソース ガバナー、ポリシー ベースの管理、パフォーマンス データ コレクションなどのサーバーの管理機能
• レプリケーションやログ配布、データベース ミラーリング、可用性グループなどサーバー間の連携機能

これらの移行方法については、次項以降で説明します。

◆ システム データベースに含まれるものは？

SQL Server のシステム データベースには、master、msdb、model、tempdb、distribution の 5つがありますが、tempdb は一時領域用のデータベースなので移行する必要はありません。また、distributionはレプリケーションで利用されるデータベースなので、レプリケーション環境での移行時にのみ関係します。model は、新しくデータベースを作成する際のテンプレート データベースなので、これも移行する必要はありません。なお、内部的に利用しているシステム データベースとして Resource もありますが、このデータベースも移行する必要はありません。

したがって、システム データベースの中に含まれるものを意識するのは、master と msdb の 2つのデータベースだけで良いことになります。master と msdb データベースの中に含まれる情報は、次のとおりです。

master データベースにはログイン アカウントやサーバー ロールの設定、構成オプション、tempdb の設定、リンク サーバーの設定など、msdb データベースにはデータベース メールの設定やジョブ、警告、オペレーター、Integration Services パッケージ、メンテナンス プラン（保守計画）などが格納されています。これらについて、次項以降で詳しく説明します。