松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]
Reporting Services を新規サーバーへ完全複製して、その後 SQL Server 2014 へアップグレードする場合は、追加の手順が必要になります。ここではその作業を説明します。
Reporting Services を新規サーバーへ完全複製するには、旧マスターで暗号化キーをバックアップしておく必要があります。暗号化キーのバックアップは、「Reporting Services 構成マネージャー」ツールを利用して、次のように[暗号化キー]ページから行います(画面は、SQL Server 2005 ですが、他のバージョンでもほとんど同じ操作で行えます)。
このページでは、[バックアップ]をクリックして、[暗号化キーの情報]ダイアログが表示されたら、[パスワード]に任意のパスワードを設定し、[キー ファイル]にバックアップ先のファイル名を指定します(画面は C:\backup フォルダーの下に rs暗号化キー.snk というファイル名を指定)。ここで設定するパスワードは、複雑なパスワード(大文字・小文字と @などの特殊文字を入れたりするなど)を指定する必要があり、これを行っていない場合は、次のように失敗します。
バックアップが成功した場合は、次のように表示されます。
また、設定したパスワードは、新規サーバーで復元する際に必要になるので覚えておいてください。バックアップしたファイル(~.snk)は、新規サーバーからアクセス可能なファイル サーバーや USB HDD など持ち運び可能なメディアに保存します。
Reporting Services の実体(レポート本体や、レポートに関する各種の設定)は、SQL Server 上の ReportServer および ReportServerTempDB データベースです。
このデータベース(.mdf/.ldf)は、既定では SQL Server のシステム データベースと同じ場所に作成されます(SQL Server 2005 の場合は以下のフォルダー)。
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSSQL.1\MSSQL\Data
このフォルダーにある ReportServer の実体(ReportServer.mdf、ReportServer_log.ldf)と ReportServerTempDB データベースの実体(ReportServerTempDB.mdf、ReportServerTempDB_log.ldf)をオフライン バックアップします(SQL Server サービスと Reporting Services サービスを停止した上で、ファイルをコピーします)。
この 2つのデータベースは、次のようにオンライン バックアップ(BACKUP ステートメント)でも取得しておくことを強くお勧めします(これは SQL Server を起動した状態で実行します)。
もし、オフライン バックアップからの復元がうまくいかなかった場合には、このオンライン バックアップを利用して、復元を行うことができるので、取得しておくことをお勧めします(∵Reporting Services は、万が一のときでも、この ReportServer と ReportServerTempDB のオンライン バックアップと暗号化キーのバックアップさえあれば、元の状態に戻すことができるからです。オンライン バックアップから復元手順については、次の章で説明しているので、以降の手順でどうしてもうまく復元できない場合には、こちらもご覧いただければと思います。次の章は、SQL Server 2014 での操作ですが、SQL Server 2005 でも同じような操作で復元できます)。
以降の操作は、SQL Server の Reporting Services をインストールするときに、次のように[既定の構成をインストールする]を選択した場合の操作手順になります。
もし、[サーバーを構成せずにインストールする]を選択している場合は、Reporting Services 構成マネージャーでサーバーを構成をした後に、以降の手順を実施してください。
旧マスター側で取得したオフライン バックアップは、SQL Server の他のシステム データベースと同様、ファイル コピー(上書きコピー)で復元します。この際、SQL Server サービスと Reporting Services サービスを停止しておくようにします。
ファイルのコピーが完了したら、SQL Server サービスを起動した後に、Reporting Services サービスを起動します(ReportServer と ReportServerTempDB データベースを SQL Server に認識させた後に、Reporting Services サービスを起動します)。
サービス起動後は、Reporting Services がこれだけで完全復元されているわけではなく、レポート マネージャー(http://localhost/Reports)やレポート サーバー(http://localhost/ReportServer)にアクセスしても、次のようにエラーになります。
どちらも「初期化されていません」エラーが表示されます。初期化を行うには、「Reporting Services 構成マネージャー」を利用します。
この操作は、SQL Server 2005 の場合の操作で、SQL Server 2008 以降の場合はこの操作は不要です。SQL Server 2005 では、「Reporting Services 構成マネージャー」を起動すると、次のように表示されます。
初期化がエラーになっていることを確認できます。
これを解消するために、次のように[初期化]ページを開きます。
このページでは、[初期化済み]のチェックが付いているマシンを選択して、[削除]ボタンをクリックします(これは旧マスターで構成されたものなので、削除しておく必要があります)。
削除が完了したら、もうひとつのマシンも選択して、[削除]ボタンをクリックします
削除後は、次のようにエラーが表示されますが、問題ありません。
次に、マシンの一覧が「空」になっていることを確認して、[初期化]ボタンをクリックします(もし空になっていない場合は、再度[削除]ボタンで削除を試みてください)。
初期化が完了すると、次のように[初期化済み]のチェックが付いたマシンが追加されます。
初期化が完了した後は、暗号化キーを復元することで、Reporting Services を旧マスターと同じ状態に戻すことができます。この操作は、SQL Server 2005 でも、SQL Server 2008 以降でも同様に行う必要があります。暗号化キーの復元は、次のように[暗号化キー]ページから行います。
このページでは、[復元]ボタンをクリックして、[暗号化キーの情報]ダイアログが表示されたら、[パスワード]にバックアップ時に指定したパスワードを入力して、[キー ファイル]にバックアップした暗号化キー(.snk)を指定します。
この作業は、SQL Server 2008 以降を利用している場合にのみ行って、SQL Server 2005 の場合は必要ありません。SQL Server 2008 以降を利用している場合は、[初期化]ページの代わりに、[スケールアウト配置]ページがあります。
暗号化キーの復元が完了すると、このように 2台のサーバーが表示されて(復元前は空)、上に表示されるものが、古いサーバーになるので、これを選択して、[サーバーの削除]ボタンをクリックします。次のように確認ダイアログが表示されるので、[OK]ボタンをクリックして実行します。
これで、数秒すると次のように 1台のサーバーのみになります。
もし、1台のサーバーが残らずに、次のように 2台とも削除されてしまう場合は失敗です。
この場合は、[サーバーの削除]ボタンをクリックしたときに選択したサーバーが間違っているので、もう一度、暗号化キーをバックアップから復元し、再度、[サーバーの削除]ボタンで、今度は違うサーバーを選択して、実行してみてください([スケールアウト配置]に 1台のみ表示されるようになるまで実行してみてください)。
Reporting Services の電子メールの設定に関しては、手動で再設定をする必要があります(以下の画面は SQL Server 2005 ですが、他のバージョンでも同様です)。
電子メールの設定は、「rsreportserver.config」ファイルに格納されているので、これは手動で再設定する必要があります。なお、このファイルは、SQL Server 2005 の場合は、既定で次のフォルダーに作成されています。
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSSQL.3\Reporting Services\ReportServer
SQL Server 2008 以降の場合は、既定は次のフォルダーになります。
SQL Server 2008
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS10.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer
SQL Server 2008 R2
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS10_50.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer
SQL Server 2012
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS11.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer
以上で、作業が完了です。これで旧マスターと同じようにレポートを参照できるようになります。もしうまく復元できない場合は、次の章で説明するオンライン バックアップからの復元手順を試してみてください。
以前と同じようにレポートが参照できるようになる
これで、SQL Server 2014 へアップグレードする準備ができました。SQL Server 2014 へのアップグレード方法については、前の章を参照してください。
行った作業をまとめると、次のようになります。
新規サーバーへの複製後の注意点としては、レポートのセキュリティ設定で Windows のローカル ユーザーを利用している場合です。これは、次のような状況です。
Windows のローカル ユーザーの場合は、マシン(OS)が変わったとすると、同じ名前のユーザーを作成したとしても、内部的な SID(Security ID)が異なってしまうので、Reporting Services にとっては、認識できないユーザーとなってしまいます。このため、新規サーバーでは、Windows のローカル ユーザーが全く表示されない形になります。
これを回避する方法はないので、Windows のローカル ユーザーを利用している場合は、再設定をする必要があります。これは、あくまでも Windows のローカル ユーザーを利用している場合のみの話しで、Active Directory ドメインのユーザーであれば問題なく複製されている(復元できている)ので、再設定をする必要はありません。
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