松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]
HASH インデックスでは、BUCKET_COUNT(バケット数)を適切な値へ設定していないと、性能低下の原因に繋がります。
これについて、col2 の検索(取得件数が約 5件になる検証)で利用したのと同じテーブル(1,000万件のデータ)で説明します(以下)。
col2 列の HASH インデックスの BUCKET_COUNT を 400万、100万、10万、1万に設定したテーブルを 4つ作成しました。
このテーブルに対して、次のように INSERT .. SELECT ステートメントを利用して、1,000万件分のデータを一括コピーしています。
上の INSERT .. SELECT で 1,000万件のデータを一括コピーしたときの性能差は、次のようになりました。
BUCKET_COUNT が 100万のときは 1.1倍、10万のときは 2.1倍、1万のときは 9.2倍も遅くなっていることを確認できました。
今回の col2 列は、次のように一意な値が約 200万件あります。
また、特定の値で検索すると、約 5件の結果が返ります(約200万件 * 約5件=1,000万件)。
BUCKET_COUNT が異なる場合の SELECT ステートメント(col2 列での検索)の性能差は、次のようになりました。
BUCKET_COUNT が 100万のときは 1.01倍(ほぼ同じ)、10万のときは 1.1倍、1万のときは 1.66倍も遅くなっていることを確認できました。
このように、BUCKET_COUNT の設定は、INSERT や SELECT へ影響があることを確認できました。特に BUCKET_COUNT を小さい値に設定した場合(col2 の例では 1万件)は、性能が大きく低下するので注意が必要です。
BUCKET_COUNT の設定基準は、オンライン ブックの以下のトピックに記載されています。
ハッシュ インデックスの適切なバケット数の決定
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/dn494956.aspx
このトピックでは、「ほとんどの場合、バケット数はインデックス キーにおける別個の値の数の 1 倍から 2 倍の範囲に設定する必要があります」と記載されています。別個の数は、前述の DISTINCT で検索した一意な値の数のことで、col2 では約200万件でした(以下に再掲)。
したがって、オンライン ブックの記述によれば、col2 列では、200万(1倍)~400万(2倍)ぐらいが妥当な設定値であるということになります。実際、400万に設定したときと、100万に設定したときでは、性能差が現れたので(100万に設定したほうが若干遅くなったので)、col2 に関しては、400万程度が妥当な設定値であることが分かります。また、BUCKET_COUNT は、テーブルの作成時(CREATE TABLE 時)に設定して、後から変更することができないものなので、将来増えるであろうデータ量も想定して、多めに設定しておく必要があります(その分、メモリを消費することになりますが、どれぐらいのメモリを消費するのかについては後述します)。
また、このトピックでは、「バケット数は内部的に、最も近い 2 のべき乗に切り上げられます。たとえば、バケット数に 300,000 を指定すると、実際のバケット数は 524,288 になります。」と記載されていて、BUCKET_COUNT で設定した値に、最も近い 2のべき乗に設定される(切り上げられる)とあります。
したがって、代表的な 2のべき乗を知っておいた方が設定がしやすくなるので、次の表が参考になると思います。
HASH インデックスでは、十分な BUCKET_COUNT を設定している場合(一意な数よりも大きい値へ設定している場合)には、同じ値が、同じハッシュ値になって、チェーンが構成されます。
これに対して、BUCKET_COUNT の設定が小さい場合には、異なる値でも、同じハッシュ値になってしまうことがあるので、次のようにチェーンが長くなってしまいます。これは、ハッシュ コリジョン(衝突)と呼ばれています。
現在のバケット数や、空いているバケット数、チェーンの長さなどは、次のように「dm_db_xtp_hash_index_stats」動的管理ビューを利用すると確認することができます。
この結果のうち、一番上のものが BUCKET_COUNT を 1万に設定したときのもので、現在のバケット数(total_bucket_count)が 16,384、空きバケット数(empty_bucket_count)が 0、avg_chain_length(平均のチェーンの長さ)が 610 にもなっていて、ハッシュ コリジョンが多発していることが分かります。
これに対して、上から 4つ目の結果が BUCKET_COUNT を 400万に設定したときのもので、現在のバケット数が 4,194,304、空きバケット数が 2,590,043(259万空いている)、平均のチェーンの長さが 6 になっていて、妥当なチェーンの長さになっていることが分かります(col2 は、約5件の結果が返るので、チェーンの長さは 5前後が妥当になります)。
このように、設定した BUCKET_COUNT が妥当かどうかは、このクエリを実行することで確認することができるので、確認しておくことをお勧めします。
バケット数の違いによるメモリ使用量の差は、dm_db_xtp_table_memory_stats 動的管理ビューを利用して確認することができます。
memory_allocated_for_indexes_kb が、インデックスに割り当てられたメモリ量で、この値は、バケット数をもとに決定されます。インメモリ OLTP では、1つのバケット数に 8バイトを消費するので、次の表のようになります。
今回のテーブルは、PK(col1)の BUCKET_COUNT を 1億に設定しているので、1,048,576 KB(1GB)にプラスして、col2 の BUCKET_COUNT が 100万なら +8,192(8MB)で、1,056,768 KB、400万なら +32,768(8MB)で、1,081,344 KB を消費することになります。
なお、メモリ使用量の見積もり方法については、オンライン ブックの以下のトピックも参考になります。
メモリ最適化テーブルのメモリ必要量の推定
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/dn282389.aspx
メモリ最適化テーブルのテーブルと行のサイズ
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/dn205318.aspx
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