松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]
この章では、インメモリ OLTP 機能がとういった場面で役に立つのか、早期導入/検証を行った企業での実際の利用例をベースに説明しました。利用例をまとめると、次のようになります。
オンライン ゲームや、FX 取引、データ プロバイダー、オンライン サービス、ポイントカード システムなど、大量のユーザーによる同時更新およびトランザクションとしては小さい(=実行されるステートメントが単純で、トランザクションが短い)、1秒あたりのバッチ要求数が多いシステムで、多く採用されています。これらは、まさに OLTP(オンライン トランザクション処理)システムの典型例で、こういったシステムでは、同時実行数が増えていくと、「ラッチ待ち」や「ロック待ち」が多発して、性能が頭打ちになってしまいます。インメモリ OLTP 機能であれば、ラッチおよびロックを利用しないアーキテクチャ(ラッチ フリー、ロック フリー)なので、同時実行数が増えても性能低下を抑えられます。こうしたラッチ待ちやロック待ちに悩まされているシステムで大きな効果を発揮できるのが インメモリ OLTP 機能です。
bwin 社では、ASP.NET のセッション状態データベースに対して、SCHEMA_ONLY(データの永続化なし)オプションを利用することで、インメモリ OLTP 機能での性能メリットを最大限に活かしています。このオプションでは、メモリ内にのみデータを配置して、トランザクション ログへの書き込みを行わないことで、大きな性能向上を実現することができます(データを永続化しないことによる、電源断時のデータ損失のリスクと性能向上のトレード オフ)。ASP.NET のセッション状態(セッション変数)は、既定では 20分間で破棄されるもの(一時的なデータ)なので、こういった一時的なデータ領域として、インメモリ OLTP + SCHEMA_ONLY が多いに役立ちます。
Edgenet 社では、DWH 環境でのステージング テーブルで利用していますが、バッチ処理の性能向上(8倍~11倍の性能向上)を実現しています。また、インメモリ OLTP 機能では、更新中(UPDATE/INSERT/DELETE ステートメントの実行中)に、読み取り操作(SELECT ステートメント)がブロックされることもないので、その分の性能向上も実現しています
Edgenet 社では、Delayed Durability(遅延書き込みのよるデータの永続化)オプションを利用して、性能向上も実現しています。このオプションでは、ログへの書き込みが完了するのを待たないで、コミットとすることができます(ログへの書き込みは遅延で行い、アプリケーションへはコミットが通達されます)。したがって、コミットしたにも関わらず、データの損失の可能性があり、コミット直後に電源断などが発生した場合にはデータの損失が起こり得ます。その分、大幅な性能向上を実現できるというメリットを得られます(トレード オフ)。
多少のデータ損失が許容できるような場合には、Delayed Durability オプションによる性能メリットを享受できるので、利用できる場面がないかどうか、検討してみることを強くお勧めします。例えば、もともと一定の間隔(1分間隔など)でその瞬間のデータのみを保存する(サンプリングしている)、といった処理の場合などであれば、多少のデータ損失が許容できます。こうした処理であれば、もともと間のデータを取得していないので、1分間隔であれば、最大1分分のデータは損失する可能性があるわけです。それを許容して(性能とのトレードオフで)システムを設計しているので、そういったテーブルでは、Delayed Durability を採用しても、もともとデータの損失の可能性があったものなので、何の問題もありません。ぜひ、活用してみてください(利用方法については、次章以降で説明します)。
従来ながらのディスク ベースのテーブルで、性能低下を引き起こす主な原因をまとめると、次のようになります。
これらが原因で性能が低下している場合は、インメモリ OLTP 機能を採用することで、性能向上を期待することができます。
インメモリ OLTP の性能効果を期待できるシステムは、次のとおりです。
インメモリ OLTP 機能を利用するにあたっては、性能を向上させるためのコツ(アプリケーションの記述方法や、ネイティブ コンパイル ストアド プロシージャの利用方法など)もあるので、これらについては、次章以降で、弊社のお客様の「ポイントカード システム」での実装例をベースに説明します。
第60回:SQL Server 2017 自習書 No.3「SQL Server 2017 Machine Learning Services」のご案内
第59回:SQL Server 2017 自習書 No.2「SQL Server 2017 on Linux」のご案内
第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
第54回:「SQL Server 2016 プレビュー版 Reporting Services の新機能」自習書のお知らせ
第 53 回:SQL Server 2016 Reporting Services の新しくなったレポート マネージャーとモバイル レポート機能
第 52 回:SQL Server 2016 の自習書を作成しました!
第 51 回:PASS Summit と MVP Summit で進化を確信!
第 50 回:新しくなった Power BI(2.0)の自習書を作成しました!
第49 回:Excel 2016 の Power Query を使う
第 48 回:新しくなった Microsoft Power BI ! 無料版がある!!
第 47 回:「Microsoft Azure SQL Database 入門」 完成&公開!
第 46 回:Microsoft Power BI for Windows app からの Power BI サイト アクセス
第 45 回:Power Query で取得したデータを PowerPivot へ読み込む方法と PowerPivot for Excel 自習書のご紹介
第44回:「SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」ドキュメントを作成しました
第43回:SQL Server 2014 インメモリ OLTP 機能の上級者向けドキュメントを作成しました
第42回:Power Query プレビュー版 と Power BI for Office 365 へのクエリ保存(共有クエリ)
第41回:「SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要」自習書のお知らせです
第40回: SQL Server 2012 自習書(HTML版)を掲載しました
第39回: Power BI for Office 365 プレビュー版は試されましたか?
第38回: SQL Server 2014 CTP2 の公開
第37回: SQL Server 2014 CTP1 の自習書をご覧ください
第36回: SQL Server 2014 CTP1 のクラスター化列ストア インデックスを試す
第35回: SQL Server 2014 CTP1 のインメモリ OLTP の基本操作を試す
第34回: GeoFlow for Excel 2013 のプレビュー版を試す
第33回: iPad と iPhone からの SQL Server 2012 Reporting Servicesのレポート閲覧
第32回: PASS Summit 2012 参加レポート
第31回: SQL Server 2012 Reporting Services 自習書のお知らせ
第30回: SQL Server 2012(RTM 版)の新機能 自習書をご覧ください
第29回: 書籍「SQL Server 2012の教科書 開発編」のお知らせ
第26回: SQL Server 2012 の Power View 機能のご紹介
第25回: SQL Server 2012 の Data Quality Services
第24回: SQL Server 2012 自習書のご案内と初セミナー報告
第23回: Denali CTP1 が公開されました
第22回 チューニングに王道あらず
第21回 Microsoft TechEd 2010 終了しました
第20回 Microsoft TechEd Japan 2010 今年も登壇します
第19回 SQL Server 2008 R2 RTM の 日本語版が公開されました
第18回 「SQL Azure 入門」自習書のご案内
第17回 SQL Server 2008 自習書の追加ドキュメントのお知らせ
第16回 SQL Server 2008 R2 自習書とプレビュー セミナーのお知らせ
第15回 SQL Server 2008 R2 Reporting Services と新刊のお知らせ
第14回 TechEd 2009 のご報告と SQL Server 2008 R2 について
第13回 SQL Server 2008 R2 の CTP 版が公開されました
第12回 MVP Summit 2009 in Seattle へ参加