松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 自習書シリーズの「No.4 Analysis Services の新機能」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。 なお、記載している内容は、2016年 9月時点での情報になります。[2018年12月29日]
SQL Server 2016 の Analysis Services からは、双方向フィルター機能が提供されたので、多対多の関係(Many To Many Relationship)がある場合でも、相互にフィルターをし合えるようになりました。これは、どのような状況かというと、次のようになります。
これまでの Analysis Services では、一方向のフィルターのみのサポートだったので、1対多での多側へのフィルターしかすることができませんでした。SQL Server 2016 の Analysis Services からは、双方向のフィルターがサポートされるようになったので、両方向にフィルターができるようになりました。
一方向のフィルターだと、どのような課題があるかというと、次のような「受注」テーブルの「得意先コード」の Distinct Count メジャーを想像してみてください。これは、注文のあった得意先の数を調べる場合に利用できるものですが、Analysis Services を利用せずに、SQL ステートメントで取得したとすると、次のようになります。
これは、商品区分ごとに得意先件数を取得しているものですが、「魚介類」は「39社」、「調味料」は「49社」といった得意先の数(何社に売れたのか)を確認することができます。
これと同じことを Analysis Services で試すには、まず Distinct Count メジャーを「受注」テーブルに追加します。
しかし、実際に Excel でこの値を確認してみると、次のように SQL ステートメントの結果とは異なるものになります。
これは、「商品区分」テーブルの「区分名」列を[行]に配置して、得意先の件数(Distinct Count)を取得している例になりますが、SQL Server 2016 でも、既定値は一方向のフィルターになるため、正しく計算されない状態になります(以前のバージョンと同じ結果になります)。
「区分名」列を[行]に配置するというのは、フィルターをかけているという状態になり、これは「商品」や「受注明細」テーブルを対象したメジャー(これまでの手順で試した受注金額計や CONCATENATEX で作成した商品名連結)であれば、一方向のフィルターによって正しい値を取得できます。しかし、「受注」テーブルの場合には、逆方向のフィルターになるので、得意先コードの Distinct Count のように「受注」テーブルを対象したメジャーの場合は正しい値を取得することができません。これを解決するには、「受注」と「受注明細」のフィルターを "双方向" に変更するか、RELATED 関数で該当列を取り込むか、クエリを工夫するなどの対処方法があります。
フィルターを双方向に変更するには、次のようにダイアグラム ビューでリレーションシップの[プロパティ]を開きます。
[フィルターの方向]が「<>」に設定されていて、一方向になっていることを確認できます。これを双方向に変更するには、次のように「<> >>」に変更します。
このように「受注」と「受注明細」のフィルターを "双方向" に変更すれば、得意先コードの Distinct Count でも正しい値が取得できるようになります。
SQL Server 2016 では、フィルターの既定値を "双方向" に変更することもできます(なお、Power BI Desktop ツールでは、双方向フィルターが既定値になっています)。既定値を変更したい場合には、SQL Server Data Tools で[ツール]メニューの[オプション]を開きます。
[オプション]ダイアログでは、[Analysis Services 表形式デザイナー]の[新しいプロジェクトの設定]を開いて、[既定のフィルターの方向]を「両方向」に変更することで、双方向フィルターを既定値にすることができます。
このように、SQL Server 2016 からは、双方向フィルターがサポートされたことによって、多対多の関係(Many To Many Relationship)があるような状況でも、DAX 式を記述することなく、簡単にメジャーを利用できるようになったので大変便利です。
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