松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2016 自習書シリーズの「No.4 Analysis Services の新機能」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。 なお、記載している内容は、2016年 9月時点での情報になります。[2018年12月29日]
SQL Server 2016 の Analysis Services(SSAS)は、Tabular Mode(テーブル モード/表形式モード)の性能向上や機能拡張(計算テーブル、日付ディメンション作成、双方向フィルターなど)、DirectQuery の性能向上や大幅な機能拡張(計算列、MDX クライアント、行レベル セキュリティのサポート)など、たくさんの機能が追加されています。主な新機能は、次のとおりです。
SQL Server 2016 では、Tabular Mode の性能向上として、次のものが提供されています。
Tabular Model でのパーティションの並列処理に関しては、弊社環境で次のような性能向上を確認することができました。
データ ソースには、1億件のデータベースを利用(SQL Server 2014 と SQL Server 2016 で共通のデータ ソースを利用)、Tabular Model(テーブル モデル)にパーティションを 4つ作成して、モデルの完全処理を実行したときの実行時間を SQL Server 2014 と SQL Server 2016 で比較しました。結果は、31.1%の性能向上を確認することができました。
また、このときの CPU の利用状況を比較すると、次のようになりました。
SQL Server 2014 では活用されていない CPU があったのに対して、SQL Server 2016 では全ての CPU がフル活用されていることを確認することができました(パーティションの並列処理の効果を確認)。
DirectQuery の性能向上
DirectQuery の性能向上に関しては、弊社環境で次のような性能向上を確認することができました。
クエリ1 では 4.3倍、クエリ2 では 2.7倍、クエリ3 では 1.5倍、クエリ4 では 3.8倍の性能向上を確認することができました。DirectQuery は、内部生成される SQL ステートメントの大幅な見直しが行われているので、その効果を確認することができました。
DirectQuery では、データ ソース側(SQL Server)で CCSI(クラスター化カラム ストア インデックス)を作成することで、次のように桁違いの性能向上を実現することもできます。
SQL Server 2016 では、カラム ストア インデックスが飛躍的に進化しているので、DirectQuery との組み合わせは相性抜群です。カラム ストア インデックスについては、本自習書シリーズの No.2「SQL Server 2016 Operational Analytics ~OLTP とデータ分析の両立~」編で詳しく説明しているので、こちらもぜひご覧いただければと思います。
SQL Server 2016 では、Tabular Mode(テーブル モード)に対する機能拡張がたくさん行われています。その主なものは、次のとおりです。
● DAX エディターの使いやすさの向上
SQL Server 2016 からは、DAX エディターでカラーリング(色分け)やコメントがサポートされるようになりました。
● 計算テーブルのサポート
SQL Server 2016 の Tabular Model(テーブル モデル/表形式モデル)では、DAX 式/クエリで処理した結果をテーブルとして保存できる、計算テーブル(Calculated Table)機能がサポートされました。
● 日付ディメンションの作成が簡単に
SQL Server 2016 の Tabular Model では、日付ディメンションの作成が簡単にできるようになりました。以前のバージョンでは、多次元モデルで日付ディメンションを生成できる機能がありましたが、今回からは前述の「計算テーブル」と新しい DAX 関数である「CALENDAR」を利用することで、Tabular Model でも簡単に日付ディメンションを作成できるようになりました。
● 新しい DAX 関数のサポート(50以上)
SQL Server 2016 からは、新しい DAX 関数が 50以上もサポートされました。
日付ディメンションを作成するのに便利な CALENDAR や、メジャーでの文字列連結に利用できる CONCATENATEX、列の集計が行える SUMMARIZECOLUMNS、中央値が取得できる MEDIAN など、役立つ関数が多数提供されています。なお、これらの DAX 関数は、Excel 2016 や Power BI Desktop では既にサポートされていたものですが、SQL Server 2016 からは Analysis Services でもサポートされるようになりました。
● 双方向フィルターのサポート(Many To Many Relationship への対応)
SQL Server 2016 からは、Tabular Model で双方向フィルターがサポートされるようになったので、多対多のテーブル構造(Many To Many Relationship)にも対応できるようになりました。
● DisplayFolder のサポート
SQL Server 2016 からは、Tabular Model で DisplayFolder がサポートされました。以前のバージョンでは、多次元モデルで DisplayFolder がサポートされていましたが、今回からは Tabular Model でもサポートされるようになりました。
DisplayFolder を利用すれば、メジャーや列など、似たような項目をフォルダー分けして、まとめて表示できるようになるので便利です。
● 翻訳(Translation)のサポート
SQL Server 2016 からは、Tabular Model で「翻訳」機能がサポートされるようになりました(これも以前のバージョンでは、多次元モデルではサポートされていました)。
翻訳を利用すれば、メジャーや列名、テーブル名などに対して翻訳(日本語に対する英語など)を設定できるようになるので、多言語 OS 環境の場合でも、同じ Tabular Model を利用することができます。
SQL Server 2016 からは、Tabular Model での DirectQuery が大きく進化しました。前掲の大幅な性能向上(内部生成される SQL の大幅な見直し)や、計算列のサポート、MDX クライアントのサポート、行レベル セキュリティのサポート、Oracle や Teradata、APS(Microsoft 分析プラットフォーム)のサポートなど、大きく進化しています。
● DirectQuery で計算列のサポート
SQL Server 2016 からは、DirectQuery で計算列がサポートされました。たとえば、次のような「数量 * 単価」で「受注金額」を計算している計算列があったとしても DirectQuery を利用することができます。
● DirectQuery で MDX クライアントのサポート
SQL Server 2016 からは、DirectQuery で MDX クライアントがサポートされるようになりました。これまでのバージョンでは、DirectQuery だと Excel や Reporting Services、Management Studio の MDX クエリ デザイナーからは接続できないという状態でしたが(SQL Server 2014 までは DAX クライアントのみサポート)、これが解消されました。
● DirectQuery で行レベル セキュリティのサポート
SQL Server 2016 からは、DirectQuery で行レベル セキュリティがサポートされるようになったので、通常の Tabular Model や多次元モデルと同様、ロールを利用した行レベルのアクセス制御を実現できるようになりました。
Analysis Services のその他の新機能は、次のとおりです。
● Tabular Model の互換性レベルが 1200
SQL Server 2016 の Tabular Model の互換性レベルは 1200 になります。
● Tabular Model のスクリプト モデルの変更(XMLA から TMSL へ)
Tabular Model のスクリプト モデルは、XML 形式の XMLA から、JSON 形式の TMSL(Tabular Model Scripting Language)に変わりました。これによって、よりシンプルかつ簡単にスクリプトを作成することができます。TMSL スクリプトは、従来の XMLA スクリプトと同様、SQL Server Agentジョブや Integration Services の Analysis Services DDL 実行タスク、PowerShell の Invoke-ASCmd から実行することができます。
● Tabular Model の PowerShell 対応
SQL Server 2016 からは、Tabular Model も PowerShell に対応しました。
● 拡張イベント(XEvents)のサポート
SQL Server 2016 からは、Analysis Services が拡張イベント(XEvents)に対応したので、SQL Server Profiler ツールを利用しなくても、さまざまなイベントを簡単に監視/キャプチャできるようになりました。
● Tabular Model の新しくなった TOM(Tabular Object Model)
SQL Server 2016 からは、AMO(Analysis Management Objects:分散管理オブジェクト)の一部である TOM が新しくなりました。
● DBCC コマンドのサポート
SQL Server 2016 からは、Analysis Services でも DBCC コマンドがサポートされるようになったので、データベースの一貫性チェックを定期的に行えるようになりました。
以降では、これらの新機能について、ステップ バイ ステップ形式で画面ショット満載で紹介しているので、ぜひ、皆さんも実際に試しながらこの自習書を読み進めていただければと思います。
Step 2 では、Analysis Services が初めての方でも試せるように、Tabular Mode(テーブル モード)の基本的な操作方法についても説明しているので、これをきっかけに Analysis Services の便利さを体感していただければと思っています。
第60回:SQL Server 2017 自習書 No.3「SQL Server 2017 Machine Learning Services」のご案内
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第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
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第 48 回:新しくなった Microsoft Power BI ! 無料版がある!!
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第 46 回:Microsoft Power BI for Windows app からの Power BI サイト アクセス
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第39回: Power BI for Office 365 プレビュー版は試されましたか?
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第36回: SQL Server 2014 CTP1 のクラスター化列ストア インデックスを試す
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第32回: PASS Summit 2012 参加レポート
第31回: SQL Server 2012 Reporting Services 自習書のお知らせ
第30回: SQL Server 2012(RTM 版)の新機能 自習書をご覧ください
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第25回: SQL Server 2012 の Data Quality Services
第24回: SQL Server 2012 自習書のご案内と初セミナー報告
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第22回 チューニングに王道あらず
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