松本美穂と松本崇博が執筆した Power BI 自習書シリーズの「No.1 無料で利用できる Power BI を試しみよう」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]
DAX(Data Analysis Expressions)は、前出のオープンデータで市町村別の人口を取得する際に、「[都道府県名] & [市町村名]」という文字列連結で利用したり、SQL Server からのデータ取得の際に、「[単価] * [数量]」という乗算(売上金額の計算)で利用したりしました。
DAX は、Power BI の以前のバージョンで提供されていた「PowerPivot」ツールに搭載されていた機能で、現在の Power BI では、Power BI Desktop での[データ ツール]として実装されています。
DAX と Power Query Formula Language は、文字列連結や乗算などであれば、どちらを利用しても大丈夫で、似たような機能になりますが、大きな違いは、DAX では、「メジャー」と呼ばれる計算式を定義できる点です。メジャーは、合計(SUM)や平均(AVG)、最大値(MAX)、最小値(MIN)、カウント(COUNT)、個別のカウント(DISTINCT COUNT)などで、さらに DAX の組み込み関数(CALCULATE や、PREVIOUSYEAR、DATEADD など)を利用することで、構成比率や、前年比、前年金額などを計算していくこともできます。
これまで説明してきたグラフでは、自動的に「合計」が計算されているものを利用してきました。このように、合計が自動計算されるものは、(内部的には)暗黙的なメジャーが利用されています。これを確認してみましょう。
1.ここでは、SQL Server からの接続で利用した NorthwindJ データベースから取得したデータで試してみます。次のように[フィールド]ペインから[区分名]と[売上金額]を追加すると、自動的に売上金額の「合計」が計算されています。
2.自動的に計算されていることを確認するには、次のように[視覚化]ペインで[値]に配置した[売上金額]の[▼]ボタンをクリックします。
これが[合計]になっている場合は、自動的に合計が計算されるようになります。ここでは、平均(AVG)や最小(MIN)、最大(MAX)、カウント(個別)(DISTINCT COUNT)、カウント(COUNT)を選択することで、別の計算方法を選択することができます。
3.次に、[平均]を選択して、売上金額の平均が計算されることを確認してみましょう。
平均を選択すると、売上金額の平均が計算されることを確認できます。
1.次に、DAX を利用して、メジャーを作成して、事前に売上金額の平均をしてみましょう。これを行うには、まず[データ]をクリックして、[データ ツール]を開きます。
データ ツールが開いたら、[フィールド]ペインで[受注明細]テーブルを選択します。
2.次に、[新しいメジャー]をクリックします。
これで、DAX 式が入力できるようになるので、平均を計算することができる AVERAGE 関数を利用するために、「AV」と入力します。これで、インテリセンス(入力補完)機能が働いて、AVERAGE 関数が選択候補に表示されるので、これを選択して、Tab キーを押下します。
3.次に、どの列を対象とするのか、テーブルと列の一覧が、「'テーブル名'[列名]」形式で表示されます。
ここでは、「'受注明細'[売上金額]」を選択します。DAX 式では、テーブル名は「'」(単一引用符)で囲んで、列名は [ ] で囲む決まりがあります。なお、DAX 式では「RELATED」という関数を利用すれば、(リレーションシップのある)別のテーブルの列を指定することもできます。
4.最後に「)」を入力して、引数を閉じれば、メジャーの作成が完了です。
5.メジャーの名前を変更するには、次のように「Measure =」の部分を変更したい名前に置き換えます。
6.変更後、[レポート]をクリックして、レポート デザイナーに戻って、[フィールド]ペインで[受注明細]テーブルを展開すると、作成した[売上金額平均]メジャーが表示されることを確認します。
これをテーブルに追加すると、平均が計算されていることを確認できます。
このように、DAX 式を利用して、メジャーを作成しておくことで、合計以外の計算(平均や最小、最大、カウント、個別のカウント)を事前に行っておけるようになるので、大変便利です。
7.このようなメジャーは、次のようにも利用できます(前出のメジャー リーガーの 2014年の投手成績の例)。
事前に、防御率(ERA)や奪三振(SO)、与四球(BB)に対する「平均」を計算するメジャーを作成しておくことで、最終行に、全選手の平均を表示しておけるようになります。
次に、各商品区分の構成比率(各商品の受注金額が全体の何%なのか)を計算してみましょう。
1.構成比率は、各商品区分の受注金額を「全体合計」で割り算すれば良いので、データ ツールを開いて、DAX 式を次のように記述します。
CALCULATE という関数を利用すると、第2引数に「ALL('商品区分'[区分名])」と指定することで、全体合計(商品区分全部の合計)を計算することができます。
また、作成した「構成比率」メジャーは、「0.166」のような形で 10進数形式の結果になるので、[書式]を[パーセンテージ]に変更しておくことで、「16.6%」のように表示できるようになります。。
2.次に、[レポート]をクリックして、レポート デザイナーに戻って、「構成比率」メジャーを追加してみます。
「構成比率」(各商品の受注金額が全体の何%なのか)が正しく計算できていることを確認できます。
次に、前年金額を計算してみましょう。
1.前年金額を取得するには、データ ツールを開いて、DAX 式を次のように記述します。
CALCULATE 関数では、第2引数に「PREVIOUSYEAR」関数を指定することで、前年のデータを取得することができます。なお、「PREVIOUSYEAR」関数の部分は、次のように「DATEADD」関数を利用しても同じ結果(1年前のデータ)を取得することができます。
2.設定後、[レポート]をクリックして、レポート デザイナーに戻って、「前年金額」メジャーを追加してみます。
[マトリックス]グラフを選択して、[行]に[区分名]、[列]に[日付]テーブルの[Year]列を配置して、[値]に[売上金額]と[前年金額]を配置することで、前年金額を確認することができます。
DAX では、SEARCH 関数を利用して、文字列検索(文字列のワイルドカード検索)を行うこともできます。
1.まずは、データ ツールを開いて、SEARCH 関数を利用してみましょう。ここでは、[商品]テーブルを選択してから、[新しいメジャー]ではなく、[新しい列]をクリックして、DAX 式を次のように記述します。
「商品名」列に「果汁」という文字が含まれるデータには「1」が返り、その他のデータの場合は「-1」が返ることを確認できます。
2.この SEARCH 関数を IF や OR と組み合わせて利用すると、次のように文字列で検索して、商品分類を作成できるようになります。
商品名に、「果汁」または「清涼」というキーワードが含まれている場合には「ジュース」に分類、「コーヒー」が含まれているなら「コーヒー」、「ビール」が含まれているなら「ビール」、「ワイン」が含まれているなら「ワイン」、それ以外のデータは「その他」に分類するようにしています。
3.DAX 式を記述したら、[レポート]をクリックして、レポート デザイナーに戻って、「分類」列を追加してみます。
分類ごとの売上金額の合計を計算できていることを確認できます。
このように、DAX(Data Analysis Expressions)式を利用することで、既存のメジャーをもとに計算を行ったり、関数処理を行ったり、IF や OR 演算を行ったりできるようになるので、大変便利です。
DAX の詳細については、以下の Power Pivot のヘルプ ページが参考になると思います。
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/gg399181(v=sql.110).aspx
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