松本美穂と松本崇博が執筆した完全オリジナル SQL Server 2012 自習書シリーズの「No.19 データ パーティション入門」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2013年12月29日]
手順1 ファイル グループ単位のバックアップの実行
1.最初の手順は、データベース「pTestDB」を構成する 7つファイル グループ(PRIMARY、fg1 ~ fg6)を、それぞれバックアップします。通常の BACKUP ステートメントで、次のように FILEGROUP キーワードを指定することで、ファイル グループ単位でのバックアップを実行することができます。
1.次に、データ ファイルの破損をシミュレーションするために「fg5.ndf」ファイル(fg5 ファイル グループ)を削除します。ファイルを削除するには、まず、SQL Server サービスを停止しておく必要があります。サービスの停止は、次のように「SQL Server 構成マネージャー」ツールから、SQL Server サービスを右クリックして、[停止]をクリックします。
2.サービスが停止されたら、Windows エクスプローラーを起動して、次のように「fg5.ndf」ファイルを右クリックして[削除]をクリックし、直接削除します。
3.ファイルの削除が完了したら、「SQL Server 構成マネージャー」ツールから SQL Server サービスを開始します。
1.SQL Server サービスが開始されたら、Management Studio を起動して、SQL Server ログを参照します。データ ファイルへ障害が発生している場合は、次のようにエラーが記録されます。
ログへは、次のように記録されます。
日本語訳だと「物理ファイルが開けません、指定されたファイルが見つかりません」というエラーで、これがファイルに障害が発生した場合に記録されるエラー メッセージです。
2.この状態では、データベースへアクセスすることができないので、これを確認しておきましょう。クエリ エディターを開いて、データベースへ接続してみます。
この状態から復旧するには、まず破損したファイル グループを OFFLINE へ設定します。
1.ファイル グループを OFFLINE へ設定するには、ファイル グループの「論理名」を指定する必要があるので、次のようにバックアップ ファイルに対して RESTORE FILELISTONLY ステートメントを実行して、ファイル グループの論理名を取得します。
結果の LogicalName が論理名です。これにより、破損したファイル(C:\test\fg5.ndf)の論理名が「fg5」であることが分かるので、これを OFFLINE へ設定します。
2.OFFLINE へ設定するには、次のように ALTER DATABASE .. MODIFY FILE ステートメントで OFFLINE を指定します。
1.データベースを ONLINE へ設定するには、次のように ALTER DATABASE ステートメントを実行します。
これにより、データベースが利用できるようになり、破損していないファイル グループへアクセスできるようになります。
2.データベースが利用できることを確認するために、パーティション 3(2014年用、fg6 ファイル グループを利用)のデータを参照してみましょう。
結果は、問題なくデータを参照することができ、破損したファイルがあるにも関わらず、データベースを利用できたことを確認できます。現在のファイル グループとパーティションの構成は、次のとおりです。
3.次に、パーティション 3 に対して、更新系のステートメントを実行してみましょう。
これも問題なく実行できたことを確認できます。更新系のステートメントについても、破損したファイル グループを除いて、実行することができです(更新操作は、トランザクション ログへ記録されています)。
4.次に、破損したファイル グループ(パーティション2)へアクセスしてみましょう。
結果は、どちらもエラーになります。エラーには、破損したファイル グループの名前「fg5」があり、これにアクセスできないというメッセージになっていることを確認できます。
5.次に、テーブル スキャンを実行してみましょう。
結果は、2012年のデータ(パーティション 1)のデータが表示されて、クエリがエラーで完了します。[メッセージ]タブを開くと、同じエラーが発生していることを確認できます。このように、破損したファイル グループを含んだデータ範囲検索の場合は、そのファイル グループへアクセスするまでの間に取得できたデータを参照することができます。
6.続いて、データベースの状態を確認するために、次のように database_files カタログ ビューを参照してみましょう。
結果は、fg5 のみが OFFLINE であることを確認できます。
1.ログの末尾をバックアップするには、次のように BACKUP LOG ステートメントで WITH NORECOVERY を指定して実行します。
「正常に処理されました」と表示されれば、バックアップが完了です。NORECOVERY オプションを指定することで、ログ末尾をバックアップして、かつ「オンライン復元シーケンス」(SQL Server をオンラインにしたままでの復元)を開始することができます。
なお、実行時に「使用中で排他アクセスを獲得できませんでした」エラーが表示される場合には、ログ末尾のバックアップが失敗しています。この場合は、ほかに接続しているユーザーがいないことを確認してから、次のように ALTER DATABASEステートメントを実行して、データベースをSINGLE_USER モードへの切り替えを行ってから、ログ末尾のバックアップを再度実行してみてください。
2.オンライン復元シーケンスの開始後は、データベースが NOREOVERY 状態(復元中)となり、データベースへのアクセスはできなくなります。
このようにデータベースの復元中は、復旧作業を正しく行うために、データベースへは一切アクセスさせないようにして、ユーザーによる更新操作を行わせないように(トランザクション ログへ更新操作が記録されないように)しています。
1.次に、破損したファイル グループ(fg5)のみをバックアップから復元します。
1.最後に、手順5 で取得したログ末尾のバックアップをリストアします。
2.リストアが完了したら、リストアしたデータを確認してみましょう。
障害発生後に、パーティション3へ追加したデータ(2014-05-02)が正しく格納されて、破損したファイル グループ(パーティション2)のデータも復元されていることを確認できます。
3.すべてのファイル グループが ONLINE になっていることも確認しておきましょう。
以上のように、データ パーティションは、運用管理性/保守性の利点が非常に多くあります。特に、本自習書で試した次の特徴は、データ パーティションを利用する大きなメリットになります。
最後までこの自習書の内容を試された皆さま、いかがでしたでしょうか?
SQL Server 2012 のデータ パーティション機能には、多くのメリットがあり、大規模データベース環境では非常に重要な機能であることを確認できたのではないでしょうか。今回は「入門編」ということで、データ パーティションの基本的な操作方法のみの紹介になりましたが、データ パーティションのパフォーマンスについては、以下のホワイト ペーパーへ詳しく記載されていますので、ぜひ参考にしてみてください(SQL Server 2005 ベースの情報ですが、SQL Server 2012 でも、多くのことが当てはまります)。
徹底検証シリーズ「SQL Server 2005 データ パーティション パフォーマンス検証」
http://www.microsoft.com/ja-jp/sqlserver/2008/r2/technology/cqi.aspx#a03
第60回:SQL Server 2017 自習書 No.3「SQL Server 2017 Machine Learning Services」のご案内
第59回:SQL Server 2017 自習書 No.2「SQL Server 2017 on Linux」のご案内
第58回:SQL Server 2017 自習書 No.1「SQL Server 2017 新機能の概要」のご案内
第57回:SQL Server 2017 RC 版とこれまでのドキュメントのまとめ
第56回:「SQL Server 2016 への移行とアップグレードの実践」完成&公開!
第55回:書籍「SQL Server 2016の教科書 開発編」(ソシム)が発刊されました
第54回:「SQL Server 2016 プレビュー版 Reporting Services の新機能」自習書のお知らせ
第 53 回:SQL Server 2016 Reporting Services の新しくなったレポート マネージャーとモバイル レポート機能
第 52 回:SQL Server 2016 の自習書を作成しました!
第 51 回:PASS Summit と MVP Summit で進化を確信!
第 50 回:新しくなった Power BI(2.0)の自習書を作成しました!
第49 回:Excel 2016 の Power Query を使う
第 48 回:新しくなった Microsoft Power BI ! 無料版がある!!
第 47 回:「Microsoft Azure SQL Database 入門」 完成&公開!
第 46 回:Microsoft Power BI for Windows app からの Power BI サイト アクセス
第 45 回:Power Query で取得したデータを PowerPivot へ読み込む方法と PowerPivot for Excel 自習書のご紹介
第44回:「SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」ドキュメントを作成しました
第43回:SQL Server 2014 インメモリ OLTP 機能の上級者向けドキュメントを作成しました
第42回:Power Query プレビュー版 と Power BI for Office 365 へのクエリ保存(共有クエリ)
第41回:「SQL Server 2014 CTP2 インメモリ OLTP 機能の概要」自習書のお知らせです
第40回: SQL Server 2012 自習書(HTML版)を掲載しました
第39回: Power BI for Office 365 プレビュー版は試されましたか?
第38回: SQL Server 2014 CTP2 の公開
第37回: SQL Server 2014 CTP1 の自習書をご覧ください
第36回: SQL Server 2014 CTP1 のクラスター化列ストア インデックスを試す
第35回: SQL Server 2014 CTP1 のインメモリ OLTP の基本操作を試す
第34回: GeoFlow for Excel 2013 のプレビュー版を試す
第33回: iPad と iPhone からの SQL Server 2012 Reporting Servicesのレポート閲覧
第32回: PASS Summit 2012 参加レポート
第31回: SQL Server 2012 Reporting Services 自習書のお知らせ
第30回: SQL Server 2012(RTM 版)の新機能 自習書をご覧ください
第29回: 書籍「SQL Server 2012の教科書 開発編」のお知らせ
第26回: SQL Server 2012 の Power View 機能のご紹介
第25回: SQL Server 2012 の Data Quality Services
第24回: SQL Server 2012 自習書のご案内と初セミナー報告
第23回: Denali CTP1 が公開されました
第22回 チューニングに王道あらず
第21回 Microsoft TechEd 2010 終了しました
第20回 Microsoft TechEd Japan 2010 今年も登壇します
第19回 SQL Server 2008 R2 RTM の 日本語版が公開されました
第18回 「SQL Azure 入門」自習書のご案内
第17回 SQL Server 2008 自習書の追加ドキュメントのお知らせ
第16回 SQL Server 2008 R2 自習書とプレビュー セミナーのお知らせ
第15回 SQL Server 2008 R2 Reporting Services と新刊のお知らせ
第14回 TechEd 2009 のご報告と SQL Server 2008 R2 について
第13回 SQL Server 2008 R2 の CTP 版が公開されました
第12回 MVP Summit 2009 in Seattle へ参加